~森は女子の味方~
はこねのもりからキレイ、始まる。

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森林がウェルビーイングにもたらす効果として ― わかっていること・推測できること ―

森林がウェルビーイングにもたらす効果として ― わかっていること・推測できること ―

近年、「ウェルビーイング(well-being)」という言葉が広く使われるようになりました。
これは、単に「病気でない」という状態を超え、身体的・精神的・社会的に満たされた生き方を意味します。

では、森林はこのウェルビーイングをどのように支えているのでしょうか。

心理学・医学・教育といった分野の研究でわかってきたこと、そして筆者の森林セラピーの現場から感じることを合わせてお伝えします。


1 精神面での効果 ― 森がもたらす「安心と回復」
2 心理・社会面での効果 ― 回復とつながり
3 推測できること ― 創造性と問題解決力への効果
4 森林セラピストとして筆者が感じること


1 精神面での効果 ― 森がもたらす「安心と回復」
森に入ると「なんとなく気持ちが落ち着く」と感じる人は多いでしょう。

この“なんとなく”には、科学的な裏づけがあります。
森林浴によってストレスホルモン(コルチゾール)が減少し、自律神経が安定、免疫機能が向上することが日本国内の多くの研究で報告されています。
(参考:https://hakojo-lab.jp/media/2025/05/27/662

また、英国の研究(White, M. P. et al., 2019)では、都市の緑地や森林に定期的に触れる人ほど、うつ症状が少なく幸福感が高い傾向があるとされています。


2 心理・社会面での効果 ― 回復とつながり
森で過ごす時間は、心を整えるだけでなく、人とのつながりを深める場にもなります。

心理学者スティーブン・カプランとレイチェル・カプランが提唱した「注意回復理論(Attention Restoration Theory)」(Kaplan & Kaplan, 1989)によると、自然の中では“soft fascination(ぼんやりとした注意)”が穏やかに働き、疲れた脳の集中力が回復し、感情や思考の整理が進むとされています。

この“soft fascination(ぼんやりとした注意)”とは、私たちが森の木漏れ日や水の流れ、鳥の声などになんとなく心を向けながらも、強く意識を奪われない状態のことです。強い刺激にさらされずに適度に注意が引かれることで、脳の「意識的な集中」が休まり、自然にリフレッシュできるとされています。

さらに、オーストラリアでの研究(Richardson, M. et al.2021)では、グループでの森林体験を通じて、他者への信頼感や協働意識が高まったと報告されています。

風の音、光のゆらぎ、木々の香り。言葉にしなくても共有できる“安心の空気”が、森にはあります。
森林セラピーの現場でも、「初対面なのに自然に心が開けた」「人との関係が穏やかになった」といった声を多く聞きます。


3 推測できること ― 創造性と問題解決力への効果
森の中では、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる内省的な回路が活性化するといわれています。

これは、ぼんやりしている時や自己を振り返っている時に働くネットワークで、直感的・創造的な発想を生みやすくするのです。
米国カンザス大学の研究(Atchley, R. A. et al.,2012)では、4日間の自然体験後に参加者の創造的思考テストの得点が約50%向上したと報告されています。情報にあふれた社会で疲れた脳をリセットし、新しい発想や柔軟な問題解決力を取り戻す。森は、そんな“創造的ウェルビーイング”を育む場になりつつあります。

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4 森林セラピストとして筆者が感じること
森林セラピーの現場では、日々、参加者の変化を目にします。

「頭の中がすっきりして、考えが整理された」「森の中で仕事の答えが自然に浮かんだ」「多様な生き物の姿を見て、他人への怒りが消えた」――そんな言葉をよく聞きます。

森は、“考えようとせずに考える時間”を与えてくれる場所。癒やしの場を超えて、自分らしく生きる力を取り戻す場所になっているのです。

筆者自身も、森で過ごす時間が大好きです。日々変わる風景や植物、鳥や昆虫との出会いの中で、気づけば頭の中の整理が自然と進んでいることに気づきます。

森は、私たちが本来の自分を思い出す場所。これからの社会では、森林浴や森林セラピーが、よりよく生きるための“ウェルビーイングの基盤”としてますます大切になっていくでしょう。

*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。

<参考文献>
目次①
White, M. P. et al. (2019)
Scientific Reports.

目次②
Kaplan, S. & Kaplan, R. (1989)
The Experience of Nature.

Richardson, M. et al. (2021)
International Journal of Environmental Research and Public Health.

目次③
Atchley, R. A. et al. (2012)
PLOS ONE.


この記事を書いた人

高田裕司(たかだゆうじ)

中小企業診断士、森林セラピスト、キャリアコンサルタント、森林インストラクター

親子、小学生から高齢者までの様々な方のご案内を担当。NEALインストラクターでもある。

植物の生態やネイチャーゲームを取り入れた臨機応変な対応には定評があります。
経営コンサルタントとして、農業者支援を数多く実施。50坪ほどの家庭菜園での野菜づくりとランニングが趣味。

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