
「秋の養生と森林セラピー」落ち葉が語る、秋の養生法
森に一歩足を踏み入れると、空気の質が夏とはまるで違うことに気づきます。夏の蒸し暑さが過ぎ去り、秋のひんやりと透明感を帯びた空気が肌に触れ、深呼吸すると新鮮な空気が胸に広がり、とても爽やかな気分になりま...
森に一歩足を踏み入れると、空気の質が夏とはまるで違うことに気づきます。
夏の蒸し暑さが過ぎ去り、秋のひんやりと透明感を帯びた空気が肌に触れ、深呼吸すると新鮮な空気が胸に広がり、とても爽やかな気分になります。
東洋医学では、秋は「収斂(しゅうれん)」の季節といわれます。
春に植物が芽吹き、夏に花を咲かせ、盛んに外へと発散していたエネルギーは、秋になると内側へ、そして深部へと収まっていく。この自然界の流れと同じように、人の身体も秋になると身体や心も静けさの中に向かうようにできています。
五臓六腑でいえば、「肺」と「大腸」が秋に深く関わる臓腑です。
肺は、西洋医学での呼吸器だけを意味せず、呼吸や皮膚・免疫機能を司り、乾燥に弱いとされています。
また、肺は「悲しみ」「憂い」という感情とも結びついていると伝えられており、秋の物寂しさや感傷的な気分は、この季節の自然な反応ともいえるでしょう。
だからこそ、秋の養生では「呼吸」と「潤い」がキーワードになります。
森の中で深く息を吸い込むことは、単なる酸素供給ではなく、東洋医学の観点からいうと、肺を潤し、心を整える行為そのものです。
森の中の落ち葉や土の香り、木々の発散するフィトンチッドを含んだ空気は、吸うだけで自律神経を安定させ、心拍や血圧までやさしく整えてくれます。吸う息を短くし吐く息を長く意識して歩くと、自然と胸郭が広がり、背中や肩の緊張がほどけリラックスし、頭の中が静かになっていくのを感じられるでしょう。
足元には、さまざまな形や色の落ち葉が絨毯のように重なり、歩くたびにサクサクと心地よい音が響きます。この秋の独特の音や香り、そして色彩が、私たちの五感を深く目覚めさせ、心の奥にまで届きます。
そして、落ち葉の上を歩くこと自体が「グラウンディング」の実践になります。
落ち葉はクッションのように柔らかく、足裏に微細な刺激を与えます。その感覚に意識を向けることで、自然と姿勢が整い、重心が安定し、心身が「いまここ」に戻ってきます。
また、リフレクソロジーの観点からも、足裏への刺激は、秋に弱りやすい肺や大腸へ働きかけて、内側からの調整をサポートしてくれます。
食養生の面でも、秋は「潤いを補う」ことが大切です。
大根、れんこん、白きくらげ、梨、百合根、杏仁など白い食材は、東洋医学では肺を潤すとされ、乾燥しがちな粘膜や皮膚を守ってくれます。
秋から冬に向かい冷えが強まる前に、温かいスープや蒸し料理などで身体を内側から優しく温めることもポイントです。そして、香り高いハーブティーや季節の果物を使ったコンポートなど、味覚や嗅覚を豊かに刺激するものは、心にも潤いをもたらします。
精神面の養生も秋には欠かせません。
木々が葉を落とす姿は、私たちに「手放すこと」の大切さを教えてくれます。
必要なものだけを内に残し、不要なものを静かに置いていく。
呼吸法や瞑想を取り入れると、日々感じる緊張感や、心の奥に溜まった悲しみが、吐く息とともに流れていき、胸の空いたスペースに新しい空気や光を取り込むことができます。
森の中での深い呼吸や静かな散歩は、こうした心の浄化作用が癒しの時間ともなるのです。
また、森林セラピーでは「傍観」といい、森の中でただ自分の好きな場所で好きな体勢で佇む時間を大切に十分な時間をとります。森という生きた空間で、季節ごとの変化を五感で受け取ることは、現代人にとって最良のセルフケアであり、自然のリズムと再び同調するための入り口になります。
忙しい日常の中で、知らず知らずのうちに溜め込んでしまった疲労感を、森の静けさの中で落ち葉の香りに委ねてみる…それだけで、心と身体は驚くほど軽くなるのです。
秋の森は、五感を刺激する宝庫です。
視覚・聴覚・嗅覚・触覚、そして味覚までも豊かに私たちの心身に刺激が入ります。
金色に輝く木漏れ日、風に揺れる葉のざわめき、落ち葉に染み込んだ土の匂い、そして歩く足裏に伝わる空気より暖かな温もり。こうした感覚体験が、自律神経を整え、免疫力を高め、自然治癒力を呼び覚ましてくれます。
養生としてのセルフケアは、ひとつではありません。
皆さんは、自分のセルフケア方法をいくつ持っていますか?
・「毎日」1人でしてみる。
白湯を飲む。呼吸を深める時間をもつ。森の香りを吸い込む(アロマを焚く)。
・「週に一度」どこかへ出かけてみる。
森林セラピーのイベントや自然散策。静かな時間を過ごす場所へ身を置く。
・「月に一度」人に委ねてみる。
リフレクソロジーや施術を受け、プロの手で心身を整える。
この三層をゆるやかに織り交ぜ、自然のリズムに沿いながら自分を整えることができるでしょう。
そんなセルフケアの方法をお伝えするプログラム、
10月6日に箱根やすらぎの森にて開催する森林セラピーはまだまだ募集しております。
↓
足元から整う、深い癒しのセッション「リフレクソロジー×森林浴×グラウンディング」
~まとめ~
季節が巡るたびに同じ森を訪れてみると、自分自身の内面の変化にも気づきやすくなります。
秋は次の季節への準備期間でもあります。寒い冬を健やかに迎えるためには、秋にしっかりと肺を養い、心を整えることが不可欠です。深呼吸と潤いのある食生活、そして自然の中での静かな時間が、寒さに負けない身体と、しなやかな心を育てます。
また、落ち葉に包まれる森を歩くひとときは、単なる散歩や運動ではなく、自分自身を見つめ直し、心身の調律を取り戻す儀式のようなものにもなります。
そして、秋の養生を意識しながら森と向き合うことで、私たちは本来のリズムを思い出し、「手放しと、潤い」という自然界からの季節の知恵を日常に活かすことができます。
森の中で静かに深呼吸し、落ち葉を踏みしめながら歩く時間は、まさに「自然と調和するセルフケア」。
この秋、自分自身への贈り物として、ぜひ森での体験をしてみてはいかがでしょうか?
この記事を書いた人
渡邉綾(森林セラピスト)
森林セラピスト、ホリスティックケアプロフェッショナルスクール認定アロマセラピスト、看護師。
登山が趣味で、森が心身にもたらす効果を直に経験し、森林セラピストとなりました。
医療者として治療だけではなく、予防医療の大切さを実感しています。
看護師として、統合医療施設での勤務経験あり。
ケアルーム"Naturan"にて、アロマトリートメントによるセラピストとしてクライアントさんのケアにも携わっています。
森に一歩足を踏み入れると、空気の質が夏とはまるで違うことに気づきます。夏の蒸し暑さが過ぎ去り、秋のひんやりと透明感を帯びた空気が肌に触れ、深呼吸すると新鮮な空気が胸に広がり、とても爽やかな気分になりま...
近年、森林浴は健康や癒しの観点から広く注目されています。緑に囲まれることでストレスが軽減され、気持ちが落ち着き、心身のリズムが整うことがさまざまな研究で報告されています(Li, 2009;Park.B...
醤(ひしお)とは?大豆や麦に麹(こうじ)を加える事で発酵する、醤油や味噌の原点と言われている発酵調味料の事です。麹(こうじ)はどの材料と発酵させるかで、呼び方が変わります・「白米」を「麹」で発酵する⇒...
森子の日常の何気ない箱根ライフを、はこねのもり女子大学学長が味のあるイラストで紹介! この記事を書いた人 天野 湘子(あまの しょうこ) はこねのもり女子大学学長 箱根町仙石原出身 幼少期~小学2年ま...
森のリズムと女性の周期に寄り添う暮らしまだまだ残暑が厳しいですが、朝晩の涼しさが感じられる季節になりました。9月は、一年の中でも月がひときわ美しく輝く季節です。空気が澄み、夜空を見上げると大きく光る満...