「森林の中にいること」それだけで、多くの効果があることがわかってきています。 これまで、季節毎の「五感を用いた森林の楽しみ方」を紹介してきました。今回は、他の楽しみ方として、「テーマを決めて楽しむ」を紹介します。
テーマを決めて楽しむとは
先日、ある国立公園内の森でのプログラムに参加しました。それは、インタープリター(ガイド)が樹木の一生をテーマに、3時間30分、森林の中を歩きながら案内をするというものでした。
樹木の種(実)を探し、それが森林内の様々な場所へ、どのように運ばれるのか、そして芽を出した後に、それがどう育っていくのか、そして枯れるとどうなっていくのか、をそれぞれの実物を見たり、触ったりしながらわかりやすい解説がありました。そして、森林の生態系についても、森林の中で動物達がどのような役割を果たしているのかを多くの実例を基に伝えてくれました。
その森の中は、高低差もかなりあり、歩くだけでも体力的にはかなりきついところでしたが、特にそれも感じず、終わった後には、見方がいろいろ変わった気がしました。 森林の中でテーマを決めて観察や体験をしながら過ごすと、時間を忘れて楽しめるのではないか。そうすることにより、結果として長時間森林の中で過ごすことが容易になるのでは、と思いました。
具体的なテーマにはどのようなものがあるのか
森林の中でできるテーマ例をいくつか紹介します。
音をテーマにして森林を歩いてみる
森林の中で耳を澄ますといろんな音に気がつきます。主なものとしては、鳥やセミなどの鳴き声、葉が擦れる音、水が流れる音があります。同じ種類の音の違い、例えば鳥の鳴き声での様々な違いに焦点を当てるのも面白いと思います。
また、場所によって聞こえる音も変わるので、いろんな場所で音に焦点をあててみることは興味深いものになることでしょう。
花をテーマとして森林を歩いてみる
森林の中には、樹木の花や草花など、花はたくさんあります。また、目立つ花と目立たない花があり、特に樹木の花の場合、普段なかなか気づかない目立たない花が多くあります。例えばコナラ、スダジイ、イチョウなどは、春に花が咲きます。
それぞれ実は有名ですが、実になる前に当然咲いている花については、どのようなものなのかはあまり知られていませんよね。また、カエデなどはこれも春に、赤い花を咲かせます。季節ごとの変化も楽しめます。
木の実をテーマとして森林を歩いてみる
木の実にはいろいろなものがあります。すぐに頭に思い浮かぶのは、どんぐりです。どんぐりとは、ブナ科の木の実のかたい皮をもつ種子の事をいいます。つまり、コナラ、スダジイ、マテバシイ、クヌギ などが該当します。それぞれの違いを楽しむことも面白いですね。
落ちているものを見る機会は多いのですが、それに加えて気付きにくいのが、木になっている実を見てみることです。目が慣れるまではなかなか気付きにくいのですが、「樹木に実っている実を観察する」ことはぜひやってほしいことです。
動くものをテーマとして森林を歩いてみる
「森林の中で動くもの」の候補としては、動物や昆虫があります。動物では鳥は多くみることができます。鳥の鳴き声の違い、色や大きさの違いを観察してみること。足跡も多く見つけることができます。何の足跡なのかを想像してみることも面白いものですね。
昆虫では、チョウやガは見つけやすいものですね。他にも様々な動くものに焦点をあててみると面白いのではないでしょうか。
樹木や草花のことを調べてみる
興味を持ったら、樹木や草花について、調べてみることで、興味が膨らんでくるかもしれません。僕自身は、以前はほとんど名前も知らない状況でした。その中で様々な生態系の仕組みや動植物の子孫を残すための工夫(進化)などを知ることで、樹木や草花の違いに興味を覚えました。
「森林の中で多くの時間を過ごす」、そのための道具として、テーマを持つことお勧めします。森林は、毎日同じということはありません。季節の差はもちろん天候の違いでもどんどん表情を変えていきます。
森林のことを詳しく知ることで、自らが生活していく中での知恵につながることも多くあるかもしれません。
この記事を書いた人
高田裕司(たかだゆうじ)
中小企業診断士、森林セラピスト、キャリアコンサルタント、森林インストラクター
親子、小学生から高齢者までの様々な方のご案内を担当。NEALインストラクターでもある。
植物の生態やネイチャーゲームを取り入れた臨機応変な対応には定評があります。
経営コンサルタントとして、農業者支援を数多く実施。50坪ほどの家庭菜園での野菜づくりとランニングが趣味。