
五月病 春が身体と心に及ぼす影響
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近年、森林浴が心と体にもたらす効果について、さまざまな研究が進んでいます。これまでに報告されたことに加え、最近報告されたことを紹介します。またそれと共に、森林浴効果を
さらに高める方法として、マインドフルネス瞑想や神社仏閣との組み合わせについても
お伝えします。
1 これまでの研究成果
2 近年の研究成果その1:森林浴が感染症予防にも寄与
3 近年の研究成果その2:森林散策によく出かける女性は不眠傾向が少ない
4 マインドフルネス瞑想との組み合わせ
5 神社仏閣と森林浴との組み合わせ
1 これまでの研究成果
これまでに発表された研究では、森林の中でのウォーキングや瞑想、自然に囲まれて食事を
するようなプログラムが、ストレスホルモンの分泌を抑えたり、自律神経のバランスを
整えたりすることが確認されています。そして、血圧の正常化やリラックス効果が得られる
ことなどが報告されており、予防医学的効果があるという報告もあります。
2 近年の研究成果その1:森林浴が感染症予防にも寄与
2025年に発表された研究成果として、国立病院機構東京医療センター再生医療研究室の落合
博子氏らによる研究があります。この研究は、40~70歳の健康な日本人男性84名を対象に、森林浴と都市散策の効果を比較するランダム化比較試験を実施しました。その結果、森林浴
グループでは唾液中の分泌型免疫グロブリンA(sIgA)が有意に増加し、粘膜免疫機能の強化が確認されました。また、ストレスホルモンの低下や気分の改善も観察され、森林環境が
メンタルヘルスの向上にも寄与することが示されました。
この研究はこれまで森林浴によりNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化するという体内での
免疫についての効果が発表されていましたが、唾液中という外から入ってくるものに対する
粘膜免疫に関する効果が明らかになり、メンタルヘルスの向上効果に加え、森林浴が感染症
予防に寄与することも確認できました。
3 近年の研究成果その2:森林散策によく出かける女性は不眠傾向が少ない
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の研究では、森林散策によく出かける
女性ほど不眠症の割合が低いことが名古屋市民約2,000人を対象とした疫学調査で明らかになっています。これまでにも午後2時間程度の森林浴で当日夜の睡眠が一時的に改善されるという報告はありましたが、森林浴を継続した場合に日常の睡眠にもたらす効果が報告されたのはこれが初めてとのことです。月に1回以上森林浴を行う人は、不眠傾向が少ないという調査
結果が出ています。
4 マインドフルネス瞑想との組み合わせ
森林浴の効果をさらに高める方法として、最近では「マインドフルネス瞑想」との組み合わせが注目されています。マインドフルネスとは、「今、この瞬間に意識を向けること」で、判断や分析をせずに、ただ呼吸や感覚、自然の音などに注意を向けます。
実際に、森林の中でマインドフルネスを行うと、集中力が高まり、感覚が研ぎ澄まされると
いう感想を持つ方が多くいます。筆者もそのことを実感しています。
おすすめの方法としては、まず森林の中を静かに歩く「歩く瞑想」から始めてみましょう。
一歩一歩、足の裏の感覚や、聞こえてくる鳥の声、風の音に注意を向けます。途中で立ち
止まり、深く呼吸しながら静かに座ってみるのも良いでしょう。目を閉じて、呼吸や周囲の音、体の感覚に意識を向けてみてください。それだけで、心が自然と落ち着いてくるのを感じられるはずです。
5 神社仏閣と森林浴との組み合わせ
もう一つのおすすめは、神社仏閣と森林浴を組み合わせることです。神社仏閣には精神を落ち着かせる様々な仕掛けがあり、訪れるだけでも「心が洗われる」と感じる人が多いです。
森林の静けさと神聖な空間が重なることで、「自然の中の聖域」としての体験が強化され、
精神的回復や気力の充実につながります。
神社仏閣と森林浴の融合は、「自然」と「精神性」を同時に取り入れることができる稀有な
取り組みです。現代のストレス社会において、身体の回復だけでなく、魂の安らぎを提供する新しい癒しの形として大きな可能性を持っています。
筆者もマインドフルネス瞑想と神社仏閣、そして森林浴を組み合わせたプログラムを実施しています。そこでは、神社の心を浄化させる仕掛けを意識して引き出すことで、参加者がよりスッキリ感を感じられることを実感しています。
他にも、森林浴とさまざまな組み合わせをすることで、これまでとは異なる効果が発生するのではないでしょうか。
◾️参考資料
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所ホームページ
https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/saizensen/2024/20240618.html
独立行政法人国立病院機構東京医療センター プレスリリース
森林浴が粘膜免疫を強化することをランダム化比較試験で確認
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000157263.html
この記事を書いた人 高田裕司(たかだゆうじ) 中小企業診断士、森林セラピスト、キャリアコンサルタント、森林インストラクター 親子、小学生から高齢者までの様々な方のご案内を担当。NEALインストラクターでもある。
植物の生態やネイチャーゲームを取り入れた臨機応変な対応には定評があります。
経営コンサルタントとして、農業者支援を数多く実施。50坪ほどの家庭菜園での野菜づくりとランニングが趣味。
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