行楽シーズン。休みに温泉に行かれた方もいるのではないでしょうか。JTBによる『温泉に関するアンケート調査(2009年第124号)』によると、1年に1回以上温泉に行く人は85%。1年に5回以上行く人は24%もいるそうです。ちなみに、温泉に行きたくなるのは「疲れたとき」。確かに筆者も疲れたときは口癖のように「温泉行きたーい!」と言ってしまいます。
ところで、世界有数の温泉大国である日本で、どのように旅行先を決めるのでしょうか?同アンケートによると、「温泉地(温泉街)の魅力」で決める人が23%いるものの、アクセスなどの地理条件で決める人も20%と第2位。実は、「効能」によって温泉地を決める人は6%しかいないという結果に。
しかしながら、温泉は泉質によって特徴が異なります。特に療養目的で使われることもある「療養泉」は10種の泉質によって効果が違えば、禁忌症もあります。泉質と効能はよく脱衣所に掲載されているのですぐに確認できます。今回は、泉質別のお勧め入浴方法についてご紹介していこうと思います。
温泉に正しく入るためのチェックポイント
温泉でまず確認したいのは、泉質の掲示です。ポイントは①pH ②浸透圧 ③効能 の3点です。
①pH ~酸性・中性・アルカリ性~
酸性・中性・アルカリ性を示す値である”pH”。1-14までの値をとり、真ん中の“7”が中性になります。それよりも数値が小さいほど酸性が、大きいほどアルカリ性が強くなります。
酸性温泉は塩酸や硫酸、ホウ酸などを含むため殺菌力が高い特徴があります。医師の指導により慢性的な皮膚疾患の治療に用いられることもあるそうです。肌刺激が強いのでピリピリすることもあります。入浴後はしっかり洗い流しましょう。
アルカリ性温泉は皮膚表面の角質などのタンパク質を軟化して除去しやすくする作用があります。肌表面がぬるぬる・つるつるとするのはこのためです。角質は肌のバリア機能を担っているため、除去すると肌が乾燥する可能性があります。入浴後はしっかりスキンケアをしましょう。
どちらもpHが7から離れるほど肌刺激が強くなるため、長湯を避け、入浴後にしっかり洗い流すことで、恩恵だけを受けて肌刺激のリスクを減らすことができます。
中性温泉は肌への作用が少なく特徴を感じにくい一方で、肌への負担が少ないというメリットがあります。
「温泉は美肌成分がたっぷりだから洗い流さなくてもいい」という方もいらっしゃいますが、実際にはケースバイケース。泉質によってはしっかり洗い流した方がいいでしょう。目安の一つにpHをチェックしてみてくださいね。
②「浸透圧」~低張性 ・ 高張性 ・ 等張性~
泉質をしっかり見てみると、低張性、高張性といった文字が記載されています。これは、温泉成分の濃度を示しています。水道水を貯めて入る自宅のお風呂は低張性。日本の水道水はミネラルなどの微量成分が少ない軟水で、安全な飲み水として届けるための残留塩素などが含まれています。これらの総合的な濃度が体液よりも小さいため、「低張性」と言われます。
反対に、成分濃度が体液よりも大きいのが「高張性」。体液と同等濃度の場合「等張性」と言うのです。
水分は濃い方から薄い方へ移動して、濃度を均一に保とうとする性質があります。低張性温泉へ入ると、濃度の小さい温泉から肌中へ水が浸入し
やすくなります。お家で長風呂をすると指先がシワシワになるのは、このためです。水が浸透すると肌に良いイメージがありますが、実際にはバリア機能が弱まってしまうため、入浴後に肌が乾燥しやすくなってしまいます。長湯をせずに、回数を分けて入るなどの工夫をしましょう。
一方で高張性温泉は成分が濃いため、成分由来の効果が出やすい点が特徴です。温泉成分が肌に合わない場合は長湯禁物ですが、基本的にゆっくり浸かることができるならば高張性温泉です。
また等張性は最も肌へ優しいと考えられています。お風呂の効果を十分に引き出すためにも、温泉の浸透圧についてしっかり確認しましょう。
③効果効能
温泉の効果は 非常にたくさんありますが、中でも全ての温泉に共通する症状として、筋肉痛や関節痛、腰痛、冷え性、ストレスによる諸症状、疲労回復、健康増進などの一般適応症が挙げられます。
これらの症状は、身体を温めることによる全身の血行促進効果と言えます。自宅の湯船でもある程度効果のある物と考えられますので、毎日の習慣も振り返ってみましょう。
さらに、療養泉には温泉ごとに独特の効果があるものも多いので、要チェックです。同時に、「一般禁忌症」や、硫黄泉や酸性泉などの泉質名がつく温泉には「皮膚または粘膜が過敏な人、高齢者二対する禁忌症もあります。」
入浴効果は年中無休。是非毎日実践して、有限資源である時間を有効に使っていきましょう。