森林には、「ストレスホルモンを減少させる」、「がん細胞などを攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる」、「血圧を正常化させる」などの様々な機能があることがわかっています。
そのことから、ハイキングやトレッキングなど森林に何かをしに行くのではなく、「森林のもつ機能に何かをされに行く」という言葉も登場しています。森林空間に行く、そのことだけでも効果があるからです。
その機能をより効果的に享受するには、人体側の受け皿である「五感」をフル活用することが大事です。
今回は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を用いた深林の楽しみ方にはどのようなものがあるのかを紹介します。
深呼吸をしましょう
はじめに深呼吸をしましょう。深呼吸とは、肺の中の空気をできるだけ多く出入させる深い呼吸のことです。
明治大学の齋藤孝教授が紹介している以下の方法を僕はよく使います。
「3秒かけて鼻から息を吸い、2秒間グッと息を溜め、15秒かけて口からゆっくり息を吐く」これを6回程度繰り返します(「呼吸入門」齋藤孝 角川書店)
できればベンチなどに座って目を閉じて行うことをお勧めします。ゆっくりと呼吸をしていると森の中の香りや音が次第にはっきりとしてきます。
視覚を用いた楽しみ方
目に入るものには様々なものがあります。森は季節に応じて大きく変化します。
春には新緑、夏は深い緑や植物の花もいろいろ咲いています。秋には紅葉がとてもきれい。
木々の中には実をつけているものもあります。冬は落葉した木々があるので、見通しがよく、遠くまで見渡せます。
その他鳥や虫など動くものもいろいろあります。
森の中で意識して行えるものとして、「色を数えてみる」というのもオススメです。
目に入ってくる色を数えてみましょう。人によって気づくものが異なるのが普通なので、数は人によって変わります。
また、例えば緑でも色々あり、それをどこまで区分するのかでも数は変わってきます。
一緒にいる方と数がいくつだったのか、どんな色があったのかを話し合うといろんな発見があります。
聴覚を用いた楽しみ方
聞こえるものにも様々なものがあります。
鳥や虫の鳴き声、川のせせらぎ、葉っぱが擦れる音、枯葉を踏む音など。
こちらも視覚同様「音を数えてみる」というのがオススメです。
人によって気づくものが異なるので、一緒にいる方と結果を話し合ってみると面白いと思います。
触覚を用いた楽しみ方
触ることができるものは意外と多いのが森の中です。
木を抱いてみるといろんなことが感じられます。また樹肌も触ってみてください。木の種類により温度が違うことにも気がつくでしょう。
温度差だけでなく、手触り感の違いも楽しんでみてください。
葉っぱも触ってみるとツルツルのものやザラザラしたものなど違いがあります。
例えばクロマツの葉は触るとトゲトゲしていて痛いほどなのですが、同じマツでもアカマツの葉はそれほど痛くはないなど。こちらも楽しめますね。
気をつけることとしては、ウルシやハゼは、人によってかぶれる方がいますので、それにはご注意ください。
味覚を用いた楽しみ方
秋には様々な果実がなります。それを楽しむこともできますし、いろいろな葉をお湯に浸すことにより、お茶にして楽しむこともできます。
サクラの葉やクロモジの葉などが代表的です。
きのこも森の中で多くのものを見ることができます。
食べられるものとそうでないものがありますので、採取する際は土地の所有者の許可を得てから、また食べる際は詳しい方に必ず確認してから食べるようにしましょう。
嗅覚を用いた楽しみ方
意外と気づかないのが、匂いです。森の中ではいろんな匂いを感じることができます。
葉や枝にも様々な匂いがします。例えばカツラの葉は秋には甘いカラメルのような香りがします。
また、クスノキの葉も揉んでみてから匂いを嗅ぐと爽やかな香りがします。
他にもサンショウ、ダンコウバイ、クロモジ、それからヒノキの葉もいい香りがします。
花の香りも楽しめます。キンモクセイの香りは多くの方が気づくものです。
そして、「雨の日は香りが湧いてくる」と表現される場合もあり、晴れた日には気づかない香りが楽しめます。
五感は意識することで開いていきます
これまで五感の楽しみ方をいろいろお伝えしましたが、五感は意識してみることで、いろいろと気づくことが増えていきます。
このことを「五感が開く」と表現する場合もあります。
このように、最初は気づかなかった香りや音に森の中にしばらくいることにより、気付いたり、見えていなかった果実を発見したりすることはよくあります。
「森に何かをされに行く」。ぜひ楽しんでみてください。
この記事を書いた人
高田裕司(たかだゆうじ)
中小企業診断士、森林セラピスト、キャリアコンサルタント、森林インストラクター
親子、小学生から高齢者までの様々な方のご案内を担当。NEALインストラクターでもある。
植物の生態やネイチャーゲームを取り入れた臨機応変な対応には定評があります。
経営コンサルタントとして、農業者支援を数多く実施。50坪ほどの家庭菜園での野菜づくりとランニングが趣味。