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【和ハーブコラム】鉄分たっぷり、和のフルーツ「山ぶどう」

【和ハーブコラム】鉄分たっぷり、和のフルーツ「山ぶどう」

実りの秋を告げる、葡萄色の宝石

天高く馬肥ゆる秋…さわやかな空気が全身を満たす季節になると、日本のあちこちから「山ぶどう」の便りが聞こえてきます。

主に本州~四国の山あいや、北海道内の沢辺・林縁などで自生する、野生のブドウです。
別名を古い名で「エビカズラ」ともいって、漢字で書くと「葡萄蔓」。

赤みがかった紫色のことを日本の古い色名を「葡萄(えび)色」と呼びますが、果実そのものや秋に紅葉する葉っぱの色、そして強力な巻きひげを伸ばして覆いかぶさるように伸びる蔓をなぞらえたのでしょうか。

ブルーベリー状の果実。摘んだ指先を赤く染めて

蔓から飛び出る巻きひげを他の植物に絡めながら這い上がっていく

ほかの植物にかぶさるように伸びる

その実りを喜ぶのは、人間だけでなく熊や猿たちも同じ。

みんなの貴重なおやつであり、滋養強壮や鉄分補給にもなる、日本の秋のフルーツです。

未熟なものはやや赤く酸味が強いですが、徐々にブルーベリーそっくりな黒紫色に熟して、甘酸っぱさが増していきます。

山ぶどうのジュース

ちなみに、私がはじめて天然の自家製・山ぶどうジュースをいただいたのは、山形県内で山菜料理の宿を営む「出羽屋(でわや)」さまでした。

たくさん歩いて疲れた身体にするりと染み渡った最高の一杯は、今も忘れられません。

山に訪れる遅い春に芽吹きを探し、摘んだ素材のよさを最大限に引き出す下ごしらえや、皿の上のあしらいひとつに手間を惜しまない姿勢。

そんなおもてなし料理を目の前にすると、いただく前から味を想像してワクワクが止まりません!

秋冬にはバラエティ豊かなきのこたちをお鍋にして、心も温かく出迎えてくださいます。
もともとは出羽三山を参る行者たちをもてなすお宿として始まったそうですが、今もなお全国からのリピーターが絶えないそう。

本物の山の味をいただけるお宿だと思います。月山から届くやわらかいお風呂の湯にもぜひ癒されてみてください。

簡単!山ぶどうのフルーツピクルス

山が近くにない方でも大丈夫。先ほどの山ぶどうは果汁を絞っただけの原液のほか、加工したジュースやジャム、醸造発酵させた赤ワインなどが続々商品化されています。

それぞれインターネットショッピングや物産館、道の駅などの店頭で手に入れることができますが、私のお気に入りは、山ぶどうの原液。

できるだけ冷蔵庫にキープするようにしています。季節に合わせてお水や炭酸水で割ったり、はちみつを少し溶かして温めて飲んだり。

夏はきゅうりやなす、ゴーヤなど。冬はみかんなども一緒に添えてみては

さて、この原液を使った“手作りピクルス”はいかがでしょう。

作り方はとっても簡単です。大根。人参。ごぼう。キャベツ。冷蔵庫の中でちょっとずつ余っている野菜はありませんか? 

それらを食べやすい大きさに刻んで軽く塩もみします。

ジップ付きの袋にそれらを入れたら「山ぶどう液」を適量注ぎ、ひと晩漬けるだけ。

するとまろやかな酸味と、ほのかにフルーティな「山ぶどうピクルス」の出来上がりです。果実だし甘いのでは?と思いきや、白いごはんにもしっかり合う一品!

しょうが、みょうが、実ざんしょうなどの和ハーブも一緒に刻んで漬ければ、爽やかな風味が一段加わるので、夏場の食欲が落ち気味のときにもぴったりです。

2~3日で食べきれる量で作られるのをおすすめします。秋のみならず一年中、山ぶどうの味を楽しんでみてくださいね。

葉も蔓もすべて

山ぶどうというと、フルーツばかりではありません。昔からその葉も蔓も大切で、山あいの暮らしに欠かせない素材でした。

葉っぱは手のひらほどの大きなものもあってお皿になりますし、エリアによっては葉を草餅の中に混ぜこんだり、乾燥させてお茶にしたりと自由自在!
先人の植物遣いの知恵はほんとうに見事だなと思います。

サラッとした手触りの葉(9月中旬 鳥取・大山にて)

そしてときに20mを超す高さになる蔓。

太いものでは直径10cmレベルのものもあるそうです。

この蔓ごと採取して、内・外皮を剥いで天日乾燥させたあと、改めて水に浸けて柔らかくし、太さを揃えるためにカットして材料を揃えます。

そこからようやく型に沿わせて編み上げていきます。皮自体はとても丈夫ですが、思った以上に軽くしなやかな印象です。

素材とともに大切なのは、細やかで確かな加工の腕。
先ほどの山菜料理に共通しますが、たくさんの手間のもとに日常のカゴづくりがなされてきたことに、改めて気づかされます。

太い蔓

蔓を規定の太さにカットして、バッグ制作の素材に

型を土台に編み込む

山ぶどうの真新しいカゴ(あじろ編み)。使いこむうちに黒く艶を増す


以前、山形の羽黒山を案内していただいた山小屋のご主人に、「(このエリアで)蔓を採取するのは夏の土用の1週間のみ」だと教えていただきました。

天然素材は有限ですから、質の良いものの採取も年々厳しくなっているし、腕の良い作り手も減っているそうです。

もし街なかで山ぶどうのバッグを見かけたら、この蔓は山の中でどんなふうに育っていたのだろう?

どんな方が編んだのだろう?と想像してしまいそうですね。大切にしていきたいものが、この国にはたくさんあります。
雨にけむる羽黒の森にて。縦方向に流れる筋がヤマブドウの蔓(6月上旬)

<ご協力いただいた取材先>
出羽屋(山形県西川町)http://dewaya.com/
宮本工芸(青森県弘前市)https://goo.gl/4DTacz

この記事を書いた人

平川 美鶴  (Mitsuru Hirakawa)

和ハーブライフスタイリスト 
植物民俗文化研究/(一社)和ハーブ協会 副理事長

8月2日“ハーブの日”生まれ。「和ハーブ」と日本人の関わりを、歴史・文学・薬効・自然風土・産業などから調査研究。講師業、商品企画開発、実践ワークショップを通じ、自然の恵みと共にあった先人の尊い知恵を生かし、未来へどう届けるかを考えるメッセンジャー。共著『あなたの日本がもっと素敵になる 8つの和ハーブ物語 ~忘れられた日本の宝物~』(産学社)、『和ハーブ にほんのたからもの』(コスモの本)
一般社団法人 和ハーブ協会(Japan Herb Federation) http://wa-herb.com

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