「人の心がわかるんですか?」
という質問とともに、カウンセラーに対する質問の王道が、次の質問です。
「どうしたら心を強くすることができるんですか?」
心を強くする、しかも一時的な強さではなく、長く安定した強さをつけるためにはどうしたらいいのか?
いくつかあるポイントの中から、選りすぐりの3つをご紹介します。
1.身体のコンディションを整える2.柔軟に、自然に考える3.つらいことを経験するプロセス
1.身体のコンディションを整える
心を強くするためには、日頃から、心の住処(すみか)である身体のコンディションを整えておくこと。なぜなら、身体のコンディションが良い方が、心が強くなるからです。
コンディションを整えるためには、①睡眠、②飲食、③運動の3つが鍵です。
①睡眠、最低6時間 & 12時前に寝る
時間だけではなく、睡眠の質が重要です。睡眠時間は個人差がありますが、最低でも6時間、なおかつ夜12時前に寝た方が睡眠の質がよいため、心身の疲労回復に効果的です。
②バランスのよい食事を、腹八分目に
飲食については、暴飲暴食し過ぎずに腹八分目を心がけ、バランスのよい食事をとること。
食べたものが私たちの身体となり、心となるのですから、自分自身のために何を食べるかをよく選んでいきましょう。
見た目や価格だけに惑わされずに、中身の良さで選んでいくのが、心のためにもよいのです。
*飲食についてさらに詳しくは、以前に書いた
『<前編>腸内の善玉菌を増やし、免疫力を高める4つのポイント』 の記事も合わせてご参照ください。
③適度な運動。1日8,000歩、うち20分間は早歩きで
運動については、適度な運動をすること。人によって異なりますが、一般的には、ウォーキングであれば、1日8,000歩くらい、且つそのうちの20分間は軽く息が上がるくらいの早歩きを。
2.柔軟に、自然に考える
お相撲さんがあれほど激しくぶつかって戦いながらも大けがをせずにすむのは、体が柔軟だから。心も同じで、柔軟に考えた方が、大けがをせずに済みます。
柔軟にというのは、①ひとつの見方にとらわれ過ぎない、②おだやかに、③自然に考える、がおすすめです。
①ひとつの見方にとらわれ過ぎない
ものごとは見方によって全く違ってきます。
「振られちゃった」と思うと悲しくなったり、恨みもつのるかもしれませんが、「新しい人と出会うチャンスかも」と思えば少しは気が楽になるでしょう。
ただそうはいっても、つらいことやショックなことがあると、心はどうしてもしばらくは頑(かたく)なになりがちです。そういったときは、無理に見方を変えようとせず、しばらく時間をとってひと休みしましょう。
そして心が落ち着いてきたら、他の見方にも目を向けてみるとよいでしょう。
②おだやかに
「おだやかに」というのは、別の言い方をすれば、大きくリアクションをとり過ぎないということ。
ある人が言ったことが気になって、心が大きく動揺することってありませんか?
この動揺は、あなたがリアクションを大きくとり過ぎているからなのかもしれません。
「そうか、あの人はそういう風に考えているっていうことなのね」などと、ニュートラルに受け取って、さほどリアクションしないようにしてみましょう。このようにおだやかにできることも心の強さのひとつなのです。
③自然に考える
「自然に」というのは、動物や植物、自然を見習いましょう、ということです。
Q.以下のそれぞれ2つのうち、どちらの方が自然だと思いますか?・「カッとなって怒る」vs「無邪気に笑う」・「ポジティブな考え」vs「ネガティブな考え」自然にということでいうと、実はどちらも自然ではありません。正確には、どちらか一方のみでは、自然ではないということ。
自然はいろんなもの、雑多なものから成り立っているからです。雨振りが続くときもあれば、晴れが続くときもありますが、降り止まない雨は決してありません。
心も同じように、天気や季節のように変化することが、自然で美しいのだと思います。泣くときもあれば、怒ってしまうこと、ボーッとすること、情けないような自分のときもあるでしょう、それが自然な心です。
「いつも明るく、ポジティブでないとダメ!」とまでするのは、いささか不自然と言えるでしょう。一方に偏りすぎるとどうしても無理が生じ、心身のどこかにひずみが出てきてしまいます。
自然に見習って、自然に考えていくこと、これも心を強くする秘訣です。
3.つらいことを経験するプロセス
心を強くするために最も効果があるのは、辛いことや大変なことを経験することです。
「可愛い子には旅をさせよ」と言いますが、強くなるためには試練を乗り越えていくこと、それが必要なのです。
お相撲さんでいえば、強くなるための稽古というのは、ギリギリまで無理をさせることです。
「私を殺さないものは、全て私を強くする」という言葉もあります。殺されなければ、死ななければ、あらゆる経験はその人の強さとなるということです。
ただし、辛いことを経験するだけでは不十分。さらに大事なのは、その辛い経験を糧にしていくこと。
辛い経験をうまく乗り越え、いい結果が出たら嬉しいところですが、実際にはうまくいかないことの方が多いのかもしれません。
そんなときには、「転んでもタダでは起き上がらない!」こと。
失敗から学び、得られるものが多いのも事実です。こうして心は確実に強くなります。
また失敗して自分の心が折れると、心折れた人の気持ちも理解しやすくなります。
こうして身につけた優しさもまた心の力となります。
なお、つらいことを経験するプロセスでキーになってくるのが、陰に日向にあって、見守り、サポートしてくれる存在です。
お相撲さんであれば一緒に稽古する仲間や兄弟子であり、親方や女将さんでもあります。
そして、先にあげた「身体のコンディションを整える」ことと「柔軟に、自然に考える」ことも、このプロセスの中で大きな力となります。
この記事を書いた人
新行内勝善(しんぎょううち かつよし)
心理カウンセラー、森林セラピスト、精神保健福祉士。
東京メンタルヘルス社にて、メンタルヘルス相談や、心の病からの職場復帰をサポート。
職場復帰プログラムでは森林セラピーを導入。
また、スクールソーシャルワーカーとして小中学校の子どもたちと家庭をサポート。