皇居東御苑の春
「千代田区千代田1丁目1番地」いわゆる皇居東御苑歩きが、いつからか私の習慣になりました。旧江戸城の重厚な石垣と近代的なオフィスタワー群を背景レイヤーに、多様な植物、生きものたちと過ごせるのが魅力だなと思います。
梅林坂エリアの梅花は終わりを迎え、二の丸庭園の雑木林エリアでは今、春がぐんぐんと立ち上がっています。ウグイスカグラの桃色の花、淡い黄緑色のオニシバリの花、黄色いベルのようなキブシやトサミズキやヒサカキの花。
ウグイスカグラ オニシバリ キブシ トサミズキ 都心であることを忘れそうな広い空からは、光量を増した陽ざしが、まだ葉を付けていない落葉樹の枝々をすり抜けて地面へたっぷり届いています。フキノトウはすでににょきにょき、ヨモギはまだ小さくてやわらかい香りがしています。
フキ ヨモギ 少し前のように気軽なお出でかけがしにくくなっている中、今回コラムを読んでくださった方へ春を感じていただけたらと思い、ここにお届けさせていただきます。
食で世界とつながる
見渡せば、情報テクノロジーは世界中の人々をボーダーレスかつ双方向に繋げ、ものすごいスピードで拡散・変化しながら暮らしの隅々に流れ込んでいます。
一方で、本物ではないものを目の前で「見たような」「聞いたような」気になってはいないかな? 自分の実感、リアルな経験を大切にできているかな? そんな問いかけに自らの物足りなさを感じたら、日常のこと、特に食べることに深く集中してみるのはいかがでしょうか。
ある日、高田馬場でミャンマー料理を食べた時のこと。メニュー帳を開けば「緑茶」に「納豆」に「発酵食」…私たちが普段口にしている食文化とリンクするものばかり! そして地元出身の方々が提供してくださる料理は長時間食べても口が疲れなくて、まるで旅をしているようなワクワクが止まなかったのを覚えています。
チャノキの葉 緑茶はそもそも「チャノキ」という木本植物の葉部分が原料。原産地は諸説ありますが、日本を含む照葉樹林文化圏に生きる人たちの暮らしに深く関わってきたハーブ(有用植物)です。「チャCha」「ティーTea」はコーヒーと並んで世界中で愛飲されていますし、現代の日本でも“お茶”と言えば当たり前の飲み物になっていますね。
ところが、飲む緑茶に含まれるカテキン類やビタミンCなどの水溶性成分は、茶葉の成分含有量の2~3割に過ぎません。淹れた後に捨ててしまう茶殻には、食物繊維の他、美しさと健やかさを保つエッセンスがまだまだたくさん残っているのです。
お茶の葉まるごと和えサラダ
今回ご紹介するのは、茶葉がポイントのミャンマー料理「ラペットゥ」をヒントにしたビューティサラダです。ミャンマーでは発酵させた茶葉を使うそうですが、もともと茶葉に含まれているβカロテンやビタミンE、クロロフィルなどの機能性成分は油に溶け出す性質がありますので、ここでは手軽にオイルで引き出します。素材の機能性、美味しさ、さまざまな食感の面白さも、まるごといただきましょう!
|材料|2人分
緑茶(ドライ茶葉)…10g
米油…100ml
ニンニク…2かけ
鷹の爪…2本
落花生…10さや分
桜エビ(ドライ)…大さじ1
ミョウガ…2個
キャベツ…1/4個
トマト…1個
ナンプラーまたは魚醤…大さじ1
カボスのしぼり汁…1個分
|作り方|
1. お湯(※分量外)で緑茶を淹れた後の茶葉をバットなどに広げ、ペーパータオルで表面の水気をとります(お茶はそのまま飲みます)。
2. 弱火のフライパンに1を入れて乾煎りしながら、水分を軽く飛ばします。粗熱が取れた茶葉は保存瓶に入れ、米油を注いで蓋を閉め、3~4日ほど室内に置いて馴染ませます。これでチャノキオイルの出来上がり。
(画像5挿入) 3. 外殻をむいた落花生を香ばしく炒め、半分に刻んでおきます。
4. 2のオイルを適量ひいたフライパンで、スライスしたニンニクが茶色くなる程度に炒めておきます。
5. ミョウガ・キャベツ・トマトは小さめに刻み、鷹の爪も輪切りにします。
6. 全ての具材、2の茶葉すべてとオイル部分(大さじ1~2程度)をボウルに入れてざっくり和え、全体をなじませます。
7. 最後にナンプラーとカボスのしぼり汁を加え、風味をととのえたら完成です。
余ったチャノキオイルは保存瓶に入れて早めに使い切ります。オリーブオイルの代わりとして手づくりドレッシングや炒め物・和え物の素材にも〇。バニラアイスクリームにそのままかければ、鮮やかな黄緑色が映えておすすめです。
参考書籍:『
PAN de WA HERB 日本人の心と体に届ける和ハーブレシピ』(イー・エム・アイ)