新緑の美しい季節に近づくにつれて芽を出し、ぐんぐん成長するハーブ。書籍で歴史を遡ると、古代ローマやギリシャ、中世ヨーロッパから多くの人が愛し、生活に取り入れてきたことをうかがい知ることができます。ペパーミントやローズマリー、スイートマージョラムなどがその代表例ですが、他にもバジルやフェンネル、ディル、タイムなど、料理で香草として使われるハーブ類も、アロマテラピーでは精油として多く取り扱われています。
キッチンとアロマテラピー
キッチンに立つと、キッチンとアロマテラピーはとても関連が深いと日々感じています。買ってきたお肉の持ちを良くしようと思えば、塩とローズマリーで軽くマリネにしておいたり、ポトフなどの煮込み料理の風味付けと臭み消しにはローリエを入れたり…。パスタのクリームソースにはセージを入れて香りづけをすることも。また、紫蘇などもその一つ。気温が上がってくるにつれ、我が家では欠かせない和ハーブの代表格です。このように、暮らしに身近なハーブが元気になるこれからの季節にぜひ試して頂けたらと思うのが、「朝一番の、キッチンでのアロマテラピー」です。
方法はとても簡単です。お気に入りの鍋に朝一番にお湯を沸かし、ベランダや庭でハーブを育てている方はお好きな摘みたてのものを入れるだけ。植物は油細胞と呼ばれる部分に芳香物質を蓄えていますが、例えばシソ科のローズマリーは葉の表面にある油胞と呼ばれる油細胞に芳香物質を蓄えているため、葉をちぎるとそこから香り物質が飛び出し私たちに届きます。分かりやすいのはミカン科のオレンジ、グレープフルーツなど。これらは剥いた皮の裏側に、目にも見える丸いプツプツした部分…油房または油嚢と呼ばれる油細胞に芳香物質を蓄えています。皮を剥いたときに良い香りがするのはそこに含まれた芳香物質が飛び出す、という仕組みだからです。ハーブを育てていない方でも、剥いた柑橘の皮をそのまま捨てずにちょっとひと手間かけて、鍋に沸かしたお湯の中に入れてみてください。そのジューシーで爽やかな香りが部屋中を良い香りの蒸気で満たしてくれ、朝からちょっと幸せなひと時を味わえることと思います。また、部屋の加湿や空気浄化にもなり一石二鳥!と感じています。
香りの可視化
さらに、ヒトは目で見たことを情報としてキャッチするのが得意な生き物。そのため目に見えない香りを「可視化」することもリラックスやリフレッシュに効果的だと考えられます。例えばマグカップの中に入れたお湯に精油を垂らして香りを楽しむ蒸気吸入法や芳香浴も、精油だけでなく摘んできたハーブを入れることで、リラクゼーション効果がより高まることが期待できます。(ただ、マグカップ で蒸気吸入法を楽しむ場合は必ず目を閉じて行ってください。ペパーミント精油など、芳香成分によっては目の粘膜に刺激を与えるものもあります。また使用するマグカップは陶器以外をおすすめします。陶器の場合、土の粒子が粗いため精油の小さな芳香成分が入り込んでしまうことがあるからです。) そしてこれからの季節は気温が上がり、暑いと感じる日も増えてくるように…。そんな時にはガラスの器とハーブ、そして精油を利用した芳香浴法がおすすめです。ガラスの器に水とペパーミントやローズマリーなどのハーブを入れ、さらに清涼感のある精油を1~3滴入れれば見た目にも涼しく、ほのかな香りを楽しむこともできます。
毎日の生活に、ちょっとしたワクワクやホッとできる時間を持つことの大切さを感じている今日この頃。この春は、育てているハーブをより楽しめるよう工夫して過ごしてみようと思っています。 ※精油の使用にあたっては、体調や既往歴の有無など注意点がありますので、詳しくはアロマテラピーの専門書などをご確認ください。
この記事を書いた人
Yuri
AEAJ認定 アロマテラピーインストラクター・アロマブレンドデザイナー・アロマハンドセラピスト
IAPAアロマ調香デザイナー
看護師
小さな頃から香りが好き。箱根も大好き。
病院に勤務していた時にセルフケアの目的でアロマテラピーと出会いました。
基礎を学んだのち、現在はアロマ調香レッスンやカウンセリングに基づいた香りづくり、ハンドトリートメントを中心に活動しています。
自然からの恵みがぎゅっと詰まった精油をこれからも大事に扱い、皆さまと様々な香りの体験をシェアしていけたら嬉しく思います。