森林セラピーってそもそも何なのでしょうか。森林浴とは何が違うのでしょうか、今回は、森林セラピーの成り立ちと医学的な証拠に裏付けされた森林浴効果にはどのようなものがあるのかをお伝えします。

「森林セラピー」ってどういうものなの、「森林浴」とは何が違うの？

森林セラピーは、医学的な証拠に裏付けされた森林浴効果のことです（NPO法人森林セラピーソサエティーのホームページより）。

少し補足しますと、「森林セラピー」とは、心身の健康維持や増進、疾病の予防を目的とし、森の保有する癒し効果が科学的に検証された「森林浴の効果」を森林内で享受することを意味する造語です。

具体的には、森の中に身を置き、森林の中での安息や森林の地形を利用した歩行や運動、森林内レクリエーション、栄養・ライフスタイル指導などの方法によって、これらの目的を達成しようとするものです。単なる「森林浴」ではなく、いわば一歩進んだ森林浴ということができます。

　＊「森林浴」は、1982年、当時林野庁長官だった秋山智英氏が提唱したもの

森林セラピーはいつ頃から出てきたものなの？

1982年以降、森林浴や森林が発散するフィトンチッドという物質の用語が使われる場面は増えてきました。しかし、森林の持つ医療・療養・予防面における効能の医学的・科学的解明はなかなか進んでいませんでした。

そのような中、林野庁が主導し、森林の健康と癒し効果に関する科学的な調査・研究が始まりました。

2004年に産学官が連携し「森林セラピー研究会」（以下、研究会）が設立されました。また「森林セラピー」を始めとする３つの商標登録を出願したのは2004年ですので、その頃から本格的な活動が始まっています。

そして、森林セラピーを行う場所である森林セラピー基地・森林セラピーロードを2006年４月に初の認定（認定者は研究会内のステアリングコミッティ）がなされました。

その後研究会は2007年に発展的に解散し、森林セラピー基地・ロード認定及び森林セラピスト検定と森林セラピー普及啓発に類する仕事は2007年に設立されたNPO法人森林セラピーソサエティーに移行し、現在に至っています。

「森林セラピー」は誰でも使うことができるのでしょうか？

科学的な検証を受けていない森林空間や、医学的な証拠に裏付けされていない森林浴効果を謳う療法等とは区別するために、森林セラピー、セラピーロード、森林セラピストの３用語は商標登録されています（商標権者はNPO法人森林セラピーソサエティー）。

ですので、誰でも使えるわけではありません。森林セラピーは、科学的効果があることが実験で実証され、認定を受けている森林セラピー基地・森林セラピーロードで行われるもののみとなっており、他の場所で行われるものは森林セラピーと言うことはできません。

現在62の森林セラピー基地・セラピーロードが認定されており、箱根町（箱根やすらぎの森セラピーロード）もその一つとなっています。

森林浴効果というけれどもどんな効果があるの？

現在では、研究が進み、医学的・科学的に証明された主な森林浴効果には以下があります。

◆交感神経の活動を抑制し、副交感神経の活動を刺激し、自律神経のバランスを整え、心拍数と血圧を降下させる
◆ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾール) を減少させ、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらす
◆NK(ナチュラルキラー)細胞数の増加等によりNK活性を上昇させ、 生体の抗がん能力も高まる
　＊月に1回森林浴すれば、生体は常に高い免疫機能を維持できる
　＊森林率の高い地域のがん死亡率<低い地域のがん死亡率
◆精神的疲労症状は約4倍以上低下(「うつ状態」の改善に有効?)
◆血圧を正常な状態(高い人は低く、低い人は高く)にする


【参考文献】「理想の最期：山で死にたくない」今井通子（研究成果執筆 宮崎良文、李 卿）日本臨床生理学会雑誌　Vol.42,No.1,2012

　このような森林浴の効果をより効果的に受け取ることができるようにする様々な方法があります。今後順次紹介していきます。