世はAI(人工知能)だ、AR(拡張現実)だと、テクノロジーが人間を越えていくぞとばかりに賑わっています。
ただ、それでも人間はアンドロイドではなく、自然界の一部、生物であることに変わりありません。
この地球上で生きている以上、太陽系の第3惑星「地球」という、大自然の影響を受けていることはまぎれもない事実です。
太陽のエネルギーで生きている私たち
寒さがいやおうなく増してくるこの時期、場合によっては気分が落ち込みがちになることも多くなってくるかと思います。
筆者の友人の女性が20代の頃、「私は太陽のエネルギーで生きているから」という話をしていました。
気になって、どういうことかとたずねてみると、12月・1月・2月頃は、地球(北半球)に到達する太陽のエネルギーが一番弱い時期であるため、「自分の元気(エネルギー)も落ち込みがち」ということでした。
そして、太陽のエネルギーが増してきて、春を迎えてくると、「元気になってくる」と。
その言葉を聞いて、当時そのようなことを考えたりすることもなかった筆者は、目を開かれるような思いでした。
あれから、20年以上のときが流れていますが、心理カウンセラーとして活動している今考えてみても、とても自然の摂理にかなっていることを言っていたのだな、と思います。
冬季うつと天候との関連
メンタルヘルスにおいては、冬場は「冬季うつ」といって、うつ病が増えてくる時期でもありますので、特に注意が必要です。
メンタルヘルスと天候との関係でいうと、日照時間が少ない地域、寒い地域、雨の多い地域では、うつ病が多かったり、自殺が多いという傾向が多少みられます。
理由としては、①「日照時間の少なさ」や「低気圧」→②「気分が落ち込んだり、不安定になりやすい」→③「うつ病」→④「自殺念慮が増す」、といったことが考えられます。
このように冬季うつには、日照時間や太陽のエネルギーが少なからず影響しており、このため身体の温かさとも関係してきます。
寒さが厳しい冬場は、身体が冷えやすく、人の免疫力も弱くなりがちです。
この時期は特に、衣食住のそれぞれで寒さ対策をし暖かくして、また適度な運動もして、身体を温め、強く保っていくのが健康によいでしょう。
年の瀬は、追い込まれやすい時期でもある
年の瀬は、悲しいことですが自殺も増えてきます。
一年の総決算の年末には、この一年を振り返ることも多くなります。このため人によっては絶望を感じたり、先の見通しも持てなくなってしまったりして、追い込まれてしまうことがあります。
また、クリスマスや年末年始には、パートナーや家族と過ごす方も多いため、そういった身寄りがあまりない方などは、まわりと自分を比べて、さらに孤独になってしまいやすい時期でもあります。
孤独感はメンタルヘルスにも悪い影響がありますので、この点もまた注意したいところです。
冬、土の中でしっかりと生命が育まれる
冬の間、樹々は枯れ、緑を落としています。動物たちは寒い冬を冬眠するなどして、耐え忍んでいます。
人間だけではなく、自然界は冬の時期は表面的な華々しさはあまりありません。
しかし、一方で、土の中など、目には見えにくいところで、新たな生命のエネルギーが着実に育っていく時期でもあります。
登らぬ太陽はない、といいますが、来ない春もありません。私たちの地球が太陽の周りを回っている限り、季節もまた巡ってきます。
「何も咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」
マラソンの高橋尚子さんの座右の銘として有名になった言葉ですが、時折思い起こしたい言葉です。
うつ病の光療法と日光浴
一年のうち、12月、1月が、降水量が最も少ない時期です。嬉しいことには、晴れの日が多く、太陽が顔を出すことが多くなります。日が短いこの時期だけに、日光浴はとても貴重です。
うつ病の治療法に光療法というのがあります。太陽光のように明るい光をあて、生活リズムを整えたり、睡眠の質を改善していく治療法です。
天然の太陽が顔を出すことが多いこの時期は、光療法を行わずとも、時間を見つけて、日光浴をすることで、生活リズムを整えたり、睡眠の質を改善することができます。
外に出かける場合には、乾燥や寒さ対策をして、暖かくしてお出かけください。
自然の中では、土の中や、目に見えないところで生命が育まれているのに思いをはせてみてください。
ちなみに、猫は心地よいところを見つけるのがとても上手です。猫が好みそうな暖かくて日の当たる場所を見つけて、日向ぼっこをするのは心地よいこと間違いないでしょう。
※なお、気分の落ち込みなど症状がひどい場合には、自己判断せず早めに医療機関を受診するなどして、医師の診断を受けてください。
この記事を書いた人
新行内勝善(しんぎょううち かつよし)
心理カウンセラー、森林セラピスト、精神保健福祉士。
東京メンタルヘルス社にて、メンタルヘルス相談や、心の病からの職場復帰をサポート。
職場復帰プログラムでは森林セラピーを導入。
また、スクールソーシャルワーカーとして小中学校の子どもたちと家庭をサポート。