自然が私たちのモデル!
自然界には学ぶところが多い。
新幹線の先頭車両、鼻が細長く伸びた形、あれはとある動物をモデルにして作られています。
「カワセミ」は、水辺に生息するスズメより少し大きいくらいのかわいい小鳥。鮮かな青い色と、長いくちばしが特徴。カワセミは獲物をとるとき、石や枝の上から水中に飛び込み、魚類や水生昆虫を長いくちばしでとらえます。
水中に入るときの抵抗をうまく減らすための秘密があの長いくちばしにあるのです。それを真似てつくられたのが、かの新幹線の先頭車両の形。
なお、新幹線のパンタグラフは、フクロウが風音も立てずに飛んでいくのにヒントを得て設計し、空気抵抗音を減らし、騒音を抑えることに成功しています。
植物や木を効果的に配置してリラックス
街に目を移すと、最近流行りのオフィスやカフェスペースなど、自然界をモデルとしているものが多いことに気づきます。
渋谷ヒカリエから新宿ミライナタワーに本社を移転した某IT企業は、打合せや憩いの場として使うカフェスペースを、自然な雰囲気で造りあげています。
観葉植物など緑を効果的に配置し、床は自然な風合いの木目調、椅子やテーブルも木製といった具合に、木の素材や自然テーストを意識的に取り入れてつくられています。
とてもリラックスできる落ち着いたスペースです。
実際、筆者がそこで仕事の打合せをしたときは、顔がゆるむというか、緊張がやわらぎ、いい意味で肩の力が抜けたような気がしました。このため、過度なストレスから解放され、アイデアも生まれやすくなります。また人との関係も優しくなれそうにさえ思えました。
働く人の健康や生産性の観点からも、緑が再評価
前出の某IT企業に限らず企業は、社員のモチベーションアップ、生産性アップ、そして健康維持向上のために知恵とお金を振り絞っています。
こうした中、新しい動きとして、働く人の健康や生産性の観点から、ビルやオフィスの価値を評価する動きが米国発で広がってきています。「空気」や「光」など7分野、約100項目の基準でオフィスビルの室内空間を点検し、基準に適合したところへ認証を与えるという認証制度も始まっています。
認証基準は、さまざまな実験結果を基に決められています。たとえば「緑の風景を見た人の集中力は6%上がる」「運動をしない社員は労働生産性の低下リスクが50%上がる」といったエビデンスに基づいているそうです。
人は木のそばでリラックスできる
こうしたエビデンスの裏付けがあるに越したことはありませんが、私たちは、自然が心地よく、気分が安らぐということは、エビデンスに裏付けされるよりもずっと前から経験的に知っています。
それは中国4千年の歴史に培われている漢字の「休」という字にも表されています。「休」という字は、「イ(にんべん)」に「木」と書きます。この字が物語っているように、人は木のそばにいてリラックスしてきたのです。木のそばで人が安らぐ、これは太古の昔から自明の理としているところです。
また、休憩を英語ではrestと言います。森はforestで、restと似ています。forestの語源には諸説ありますが、「for rest」で、「獲物を休ませ育むためのところ」というものがあります。これはその昔、王室の猟場をparkと言っていて、parkの外の動物が休む森をforestと言ったということです。
「休」の語源と、「forest」の語源はこのように似ていて、とても興味深いところです。いずれにしても、森は安らぎの場であり、実りの場でもあると言えるでしょう。
夏から秋にかけての行楽シーズン、森で安らぎのひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
注)人間にとって、自然は安らぎの場であると同時に、脅威の場でもあります。天気の変化や危険な動植物に気を付けつつ、安全に十分配慮して、自然の恵みを享受していきましょう。自然にあまり慣れていない方などは特に、森林セラピー基地など、安全に整備され、かつ森林浴効果が実証されている森を、森林セラピストとともに安心して楽しまれることをお勧めします。
この記事を書いた人
新行内勝善(しんぎょううち かつよし)
心理カウンセラー、森林セラピスト、精神保健福祉士。
東京メンタルヘルス社にて、メンタルヘルス相談や、心の病からの職場復帰をサポート。
職場復帰プログラムでは森林セラピーを導入。
また、スクールソーシャルワーカーとして小中学校の子どもたちと家庭をサポート。