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手で見るということ「手当て療法」

私が看護師として患者さんと接するとき、ふと、心の奥底にしまわれていた言葉が、まるでタイムカプセルのように開かれることが多々あります。最近では入浴介助をしていたとき、「手をもっと広く大きく使って」と、学生時代に「基礎看護技術」という授業を教わっていた先生の言葉が鮮明に思い出されました。

 学生同士でペアになり、一人が看護師役、もう一人が患者さん役になり、ベッド上での体位交換や着替え、患者さんに負担がかからないようなシーツ交換の仕方などなど…たくさんの実習をワイワイ言いながらしていたわけですが、実技の試験で先生から合格点をもらうのはなかなかにハードルが高く、友人たちと空き時間を使って随分と練習もしました。

そのときに先生がくださったアドバイス、それが「手」にまつわることがすごく多かった。


「今まで家でお手伝いをしてきましたか?」「洗濯物をたたむとき・食器を洗うとき、今の若い人たちは指先しか使わないことが多い。もっと手のひら全体を広く使ってやるのよ。」「例えば雑巾をしぼるときは指先だけじゃしぼれないでしょう?手のひらに力を込めて。」

 …あぁそうか、先生はきっとこういうことを伝えたかったのかもしれない。と、おばあちゃん(患者さん)の手が届きにくい背中や足先を洗っていたときにあらためて思ったのです。そのおばあちゃんは抱える病気からくる症状の一つとして、指先が震えたり力が入りづらかったりします。

そして加齢も加わって、手先の巧緻性や筋肉の萎縮、関節の可動域もせまくなり、「お風呂に一人で入るのは本当に大変。」とのこと。介助しているときは、私の手が、そのおばあちゃんの手のかわりになれたら。そう思います。ほどよく絞ったタオルで石けんを泡だて、背中を大きくこすり、ご自分では届きにくい部分を確認しながら適度な力を入れて洗う。

髪の毛を洗うときも同様で、うなじの部分や耳の裏側、生え際なんかはご自分では洗いにくいし、汗をかく時期だからしっかり洗って流したい…。もともとこの方はどんなふうにお風呂に入っていたのだろう?また、転倒を防ぐために、立ったり座ったりしてもらうときは必ず自分のひとつの手は、患者さんの体を支えます。

入浴介助を終えるとあらためて、手全体をよく使ったことが分かります。決して指先だけではこの仕事はできないなぁ、とも。


 また先生はよく、「看護の看は、手で見る、と書きます。」とも、言っていました。


当時は分かったようなよく分からないような気持ちでいましたが、手で患者さんに触れることはものすごく大切だと今は感じています。皮膚の温度、乾燥の有無、床ずれはできていないか、むくみはないか…それに、ご高齢者の肌はとっても皮膚が薄い場合が多いので、ちょっとの圧で赤くなったり、車椅子やベッド柵、また私たちのしている腕時計の一部なんかが当たってしまった場合でも、引っ掻き傷になったりしやすい。

本当に大切に触れないと、傷つけてしまう可能性もたくさんあります。長く家事をされてきた手・大きな身体を支えてきた足・何かがきっかけで重心がアンバランスになり片側の筋肉だけが凝り固まっている…など、たとえ言葉をかわすことが難しいとしても、手で見ること、いや、手で見ようとすることは看護の原点だと今ひしひしと感じています。


 ひしひしと感じたと言えば、先日、ぎっくり腰になりました…。久しぶりに感じた独特な痛み…。


前かがみになっていた姿勢から、戻ることもしゃがむこともできなくて、こんなとき、「とにかく誰かが近くにいて、痛いところをさすってほしい。」と心から思いました。自分じゃ手が届かないのです。腰だけでなく、かばって動くから肩甲骨まわりも痛くなり呼吸もどうしたって浅くなってしまう。「痛いの痛いの飛んでいけ」とはよく言ったもの。そんなことを感じずにはいられない数日間でした。

 最後に普段からセルフケアとして、また誰かのためにいつもそばにあると良いなぁと感じた、精油を使ったバームの作り方をご紹介しようと思います。手で触れて、痛いところをなでて、ご自身や大切な誰かの身体に大切に触れること…手当て療法の原点を忘れずにいたいと思っています。


ー  アロマバームの作り方 ー

ビーカーにミツロウ3gと植物油(スイートアーモンドオイルやホホバオイルなど)20gを入れ、湯煎にかける。

ときどき竹串でかき混ぜながらミツロウを完全に溶かす。

溶けたら遮光タイプのクリーム容器にうつし、竹串でかき混ぜる。

まわりがうっすらと白くなってきたら精油4滴を加え、さらによくかき混ぜる。

安定した場所に置き、そのままにして固め、冷めたら蓋をして完成!

冷暗所に保存し、1ヶ月以内に使い切る。

 

おすすめはラベンダー・ティートリーなどの精油ですが、精油の使用にあたっては、体調や既往歴の有無など注意点がありますので、詳しくはアロマテラピーの専門書などをご確認ください。



この記事を書いた人

Yuri

AEAJ認定 アロマテラピーインストラクター・アロマブレンドデザイナー・アロマハンドセラピスト
IAPAアロマ調香デザイナー
看護師

小さな頃から香りが好き。箱根も大好き。
病院に勤務していた時にセルフケアの目的でアロマテラピーと出会いました。
基礎を学んだのち、現在はアロマ調香レッスンやカウンセリングに基づいた香りづくり、ハンドトリートメントを中心に活動しています。
自然からの恵みがぎゅっと詰まった精油をこれからも大事に扱い、皆さまと様々な香りの体験をシェアしていけたら嬉しく思います。

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