日本の四季の風にのせて
草花が芽吹き、柔らかい新緑の香りが瑞々しく心地良い季節がやって来ました。野鳥達の、楽しげなおしゃべりや、蜜を啄(ついば)んだり、ちょこまかと動く可憐な姿は微笑ましく、いつも心躍り私達に喜びを与えてくれます。
ご家族やお友達と、大切な人と、今年もお花見を楽しまれた方も多いと思います。太陽の陽射しを浴びながら風に揺れ動く、淡いピンク色の花びらは、春を告げるブーケ。夜の暗闇の中、ライトアップされた桜の、地面から空へと立ち上るように輝く光景は、まるでグラスに注がれるロゼ・シャンパンのよう。昼夜問わず私達を魅了し、古来日本人が愛して止まない桜は、現在600種類程あり、近年、訪日のデスティネーションとする海外の方も増えているそうです。
“自然を愛でる”、日本人の歴史や文化から培われた精神性や自然への美意識は、日本の四季の風に乗り、五感を通して、多くの人々の心に、届きつつあるようです。
自然は生命達のシンフォニー
長年、日本の森林や自然、そこに住まう人々に出会う機会が多い筆者にとって、森に接し、いつも身近に自然があり、暮らしの風景となっている人は、無数の動植物生命達の息吹や、微妙に変化する自然の匂いを、意識せずとも五感で感じ取り、それは、健康的でいきいきとした日々を過ごすことにとても良い影響を与えているように感じます。自然のリズムと人の心身のリズムが調和しているのです。
ただ私達の多くは、忙しい日々の中で、ビルの室内に僅かに差し込む陽射しの眩しさや、移動中ふと見上げた空の青さに、いつの間にか、とうに季節が変わっていたのだとはたと気付かされる事が多いのが現状ではないでしょうか。五感、これは、私達人間に動物として備わる大切な本能ですが、自然に触れる機会が減り、また様々な原因による自然自体の減少によって、生きる“生命力”が低下しているように思います。
今の自分自身のリズムを知っていますか?どうですか?私達人間も自然の一部、地球に住まわせてもらっている生き物として、チューニングをして、美しいシンフォニーを一緒に奏でていきたいですね。リズムがズレてきたかなと気付いたら、次の休日には、是非自然や森林に出かけて触れて、一拍一呼吸を置いてみてください。森林浴に最適な、緑萌える季節を迎えます。
季節の過ごし方 RITU CHARYA(リトゥチャルヤー)
まだ少し寒さ残る春から暑さの高まる夏にかけて、インド・スリランカ発祥のアーユルヴェーダでは、季節や旬を取り入れた食事とともに、冬の間堅くなっていた身体を、ゆっくりとほぐすように動かしながら、老廃物を外へ排出するように過ごすという教えがあります。この“季節のリズムに添う”ことを軸とした、考えや生活は、RITU CHARYA(リトゥチャルヤー)と言われますが、日本人が古来大切にしてることに通じるものが多くあります。
山で出会う蕗の薹、うるい、たらの芽等々、春の山菜は、食すと苦みが特徴的ですが、これは、ポリフェノールという身体の老化に関わる活性酸素を除去してくれる成分によるものです。私達日本人は、温かくなったら歩いて自然へと出かけ、旬を見つけ、目を養い、心と身体に力を付けていたのです。
食べるとツンと鼻に抜ける香りが堪らないわさび(山葵)。フタバアオイに似ていることから、山葵の漢字が充てられていますが、日本古来の植物の名を記した平安時代の「本草和名」では、「和佐比」と表記されています。わさびは、蕎麦や生で食べる刺身の薬味として好まれますが、この辛味成分には、殺菌・抗菌作用があり、科学的検証等ない昔から、先人の人々が生活に取り入れていたことは、やはり、自然とともに生きる力の現れではないでしょうか。
新緑を五感で楽しんで
根わさびは、晩秋から寒くなる冬にかけて旬を迎えますが、わさびの葉や花は、春から初夏に咲き旬を迎えます。
わさび(山葵)
学名 Eutrema japonicum
別名 センナ、カラシ
分類 アブラナ科ワサビ属
日本原産のスパイスで、花や葉わさびは醤油漬けにして食べられますが、春から初夏までの僅かな間、目にすることも珍しいので、機会があれば、是非貴重な旬を五感で楽しんでみてはいかがでしょうか。
心地良いリズムを見つけて
湿度や気温が快適に保たれた森の中は、自然と人が繫がる香りで満ち溢れています。新年度の行事が続いた方、新しい出会いや人とお会いする機会の多かった方、一拍一呼吸、自然と奏でる心地良いリズムを見つけに、森へお出かけしてみませんか?
この記事を書いた人
工藤 知恵
森林セラピスト、AEAJアロマセラピスト、インストラクター、ハーバルセラピスト、アーユルヴェーダセラピスト
日本産のアロマ、ハーブの普及、地域活性に取り組む。
こころとからだ、箱根の豊かな森林で、ゆっくりと深呼吸。
森林に触れると、現代を生きる女性に役立つ、嬉しいが一杯です。
森林セラピーを、身近に楽しく触れていただけるよう、お伝えしていきたいと思います。
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