昔、お母さんに背中をトン・トン…としてもらった記憶。
家族や友人とギュッとハグした時。また、赤ちゃんを初めて抱っこしたあの瞬間…。
人には、手を介して 触れる・触れられる という体験が、脳にしっかり焼き付けられていると思います。
それはなぜなのか…は後に書かせて頂きます。
思うように動かぬ手と、簡単なリラックス方法
アロマハンドセラピーの目的は「香りとタッチングの両方による心地よさを通じて、心身の恒常性維持に役立てること」とされています。
私がアロマハンドセラピーを学ぼうと思ったのは、服を着替えることなくできるトリートメントに挑戦してみたい!と思ったから。
ですが、いざ学び始めてみると想像以上に奥深い世界でした。
解剖生理学に加え、キャリアオイルと精油の選定・手順などで頭がいっぱいになり、練習では緊張で手はカチコチ・会話する余裕もなし!であったことを思い出します。
ここで私は自分で思っている以上に緊張しやすいということを痛感しました。
緊張するということは交感神経が優位になり、末梢血管がきゅっと収縮する。
つまり体の末端にある手が冷える。冷たい手でのタッチングはせっかくのリラックス効果を半減させてしまいます。
そんなわけで、ハンドトリートメントの練習だけでなく、副交感神経を優位に立たせて緊張をほぐす練習も随分しました。
例えば簡単なリラックス方法として…
まずはツボ押し。手のひらに人という字を書いた時、中心に当たる「労宮(ろうきゅう)」を5秒ほどゆっくり押すこと。少しへこんでいるので見つけやすいかと思います。
ここは万能ツボと呼ばれ、眠れない時や頭痛がある時にもいいとされています。
次に、手浴。精油を1〜3滴混ぜたお湯に両手首までを浸す方法で、首や全身の血行もが改善され、緊張を緩めることができます。
洗面所にお湯をはり、精油を入れるだけでできるのでオススメです。
手を繋いでくれる香りの存在
こうして資格を取得したものの、それを生かすきっかけがないまま、育児と仕事の日が続いていた矢先、保育園の育児支援センターでお母さん向けのボランティアのお話を頂戴しました。
就園前のお子さんと遊びに行ける場所の一部屋をお借りしてこのような機会を頂けることが本当に嬉しく、それ以上に、満足してもらえる時間になるように自己研鑽しよう!と固く心に誓ったことは言うまでもありません。
そして、ここで着目したいのが香りの存在です。
アロマテラピーは芳香療法。
使う精油を選ぶ際、対象者の心身面をきちんとお伺いする必要があります。
また嗅覚は人それぞれのもので個人的な感覚。だからこそ「今日」心地良いと感じる香りを選んでほしい。
私がいいかな?と思って作ったトリートメントオイルを持参するよりも、対面で精油を選んで頂くことにしました。
すると香りが会話のクッションになってくれて、空間を・そして私と対象者の方とを繋ぐ役目を果たしてくれるように。
精油の効果効能はもちろんのこと目には見えない香りの力で私自身の緊張もほぐれ、アロマテラピーってやっぱりいいな、と毎回思う時間です。
脳をなでられるってどういうこと?
では冒頭で触れましたが、脳をなでられるとは、どういうことでしょうか。
ここで人体の神秘に少し触れますが、私たちがお母さんのお腹の中にいた頃…と言っても受精卵が細胞分裂や分化を繰り返し、ヒトの各器官を作っていく段階なので私たちの記憶にはありませんが、そこまで遡ると、皮膚(表皮)と感覚器系そして神経系は、同じ部分から発生しています。
それこそが、「皮膚はむき出した脳である」とも言われ、皮膚をなでることは脳をなでることにも繋がる…つまり、タッチングは気持ちを落ち着けたり、お互いの絆を深めたりし、私たちの本能にも深く関わっていると言われる所以です。
また、脳の下垂体後葉から分泌されるオキシトシンというホルモンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ、子宮の収縮や乳汁の分泌を促します。
大切なペットをなでた時やスキンシップ・触れる という行為でも分泌が促されるため、「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれます。
トリートメントを受ける側だけでなくする側も幸せを感じられるのは、こういったメカニズムによるもの。
だからこそ、ますます 大事な手に大切に触れよう と再確認させられます。
一番人気は何の精油?
さて、ボランティアではいくつかの精油を持参しますが一番人気なのは何の香りでしょうか。
私は敢えて精油名を伏せてお母さん方に香りを試して頂いていますが、今までに選ばれなかった日はないくらいの人気者の精油が、オレンジスイートです。
フレッシュなオレンジジュースのような香りがするこの精油は、スマイリーオイルとも呼ばれ、ハッピーな気持ちに導いてくれるので私も大好きです。
また、他の精油との組み合わせも楽しいもの。
何と合わせても相性が良いので、お花やハーブの香りのローズオットーやイランイラン、ラベンダーやゼラニウムなどと合わせて甘く華やかに。
また、木や樹脂の香りのサンダルウッドやフランキンセンスなどと合わせて深い落ち着きを。
何度目かの方は、「前回はこの香りが好きだったのに今日はこっちがしっくりきます。」など、好む香りの違いを楽しんで頂いたり、季節や天候、週はじめか週末かなども影響したり、私自身も発見が沢山あります。
精油を選んでもらう瞬間から始まっているアロマハンドセラピー。
これからも沢山の方との出会いを楽しめたら、とても幸せです。
※既往歴、皮膚疾患やアレルギーの有無、授乳中または妊娠の可能性の有無など注意点もありますので、詳しい内容はアロマテラピーの専門書などをご確認ください。
この記事を書いた人
Yuri
AEAJ認定 アロマテラピーインストラクター・アロマブレンドデザイナー・アロマハンドセラピスト
IAPAアロマ調香デザイナー
看護師
小さな頃から香りが好き。箱根も大好き。
病院に勤務していた時にセルフケアの目的でアロマテラピーと出会いました。
基礎を学んだのち、現在はアロマ調香レッスンやカウンセリングに基づいた香りづくり、ハンドトリートメントを中心に活動しています。
自然からの恵みがぎゅっと詰まった精油をこれからも大事に扱い、皆さまと様々な香りの体験をシェアしていけたら嬉しく思います。