
森は私たちのセラピスト〜七十二候が教えてくれる移りゆく自然の時間〜
東洋医学には『天人合一(てんじんごういつ)』という言葉があります。人の体も自然の一部。七十二候が告げる小さな変化は、そのまま私たちの体の内側で起きている変化でもあります。そして日本には「七十二候(しち...
2026年2月14日。快晴。気温は10℃から14℃。
一週間前の大雪が嘘のように、空は澄みきり、光はやわらかく、空気は透き通っていました。2月の森は、寒さの中にあるのではなく、静けさの中にあります。
そしてこの日の陽気は、これから訪れる春を感じさせるものでした。
九段下から皇居のお濠沿いを歩き、東御苑へ向かう冬の森林散策が始まりました。
■ 水面に寄り添う、冬鳥の時間
九段下駅近くの牛ヶ淵を抜け、清水濠に出ると、水面が冬の光を反射してきらめいていました。そこに浮かぶのは、冬鳥のコガモとオオバン。そして一年を通して見ることができるカイツブリ。
冬鳥たちはこの時期につがいになり、やがて春になると北へ帰っていきます。並んで泳ぐ姿は寄り添うようで、穏やかです。水の上を滑る小さな波紋を眺めていると、時間の流れがゆるやかにほどけていきます。2月の森林浴は、「動かない時間」に身を置くことから始まるのかもしれません。
■ 都市のリズムから森の呼吸へ
竹橋から北桔橋門へ向かう道では、皇居を走る多くのランナーが軽快に走り抜けていきます。都市のリズムです。手荷物検査を終え、北桔橋門をくぐった瞬間、空気の密度が変わります。ここから皇居東御苑です。入ってすぐのところにあるクスノキの落葉から、ふわりと香りが立ちのぼり、呼吸が自然と深くなりました。門の内側は、時間の流れがひと段階ゆるやかになります。
■ 香りが告げる、早春の気配
園内では、ロウバイとソシンロウバイが甘い香りを漂わせています。視覚よりも先に、香りが春の気配を告げます。天守台から見渡す青空の下、外国からの来訪者たちも足を止め、同じ空を見上げていました。
橘の実は鮮やかに色づき、葉を揉むと爽やかな香りが広がります。
日本で早咲きといわれるリュウキュウカンヒザクラも、濃い桃色の花をほころばせていました。2月は、冬と春が静かに手を取り合う季節です。
■ 椿と梅、そして蜜を求める小鳥
皇居東御苑には、桜の島、竹林、バラ園、ツバキ園、江戸時代に食されていた果物を集めた果樹古品種園と様々な植物が植えられています。
茶畑を抜けると、ヤブツバキとサザンカ。サザンカはやわらかな香りを放ち、ヤブツバキの花は硬く、しっかりと枝につきます。花弁には小さな鳥の足跡。命と命が交差した痕跡です。
梅林坂では、白梅と紅梅が満開を迎え、あたりはやさしい香りに包まれていました。花から花へと忙しく飛び回るメジロ。その小さな身体が、季節の移ろいを確かに伝えています。
■ 冬芽に宿る、静かな未来
二の丸雑木林へ入ると、今度は枝先に目を向けます。葉を落とした木々は、冬芽という小さな未来を抱いています。とりわけ美しいのがネジキの芽。光を受けて静かに輝きます。
足元ではシジュウカラが枝を移り、少し離れた場所ではシロハラが長く姿を見せてくれました。警戒しながらも、どこか落ち着いた佇まい。その存在が森の奥行きを感じさせます。

■ 2月の森林浴が教えてくれること
2月の森林浴の特徴は、「少なさ」にあります。葉は少なく、音も少なく、色も控えめ。しかしその分、香りや気配、小さな命の動きが際立ちます。視覚が静まると、嗅覚や聴覚がひらき、呼吸が深くなります。
百人番所から大手門へと歩みを進めるころ、心の中に残っていたのは、華やかさではなく、静かな充足感でした。
大雪のあとに訪れた穏やかな光の中で、命は確かに巡っています。2月の皇居は、冬を味わいながら、そっと春を先取りする場所。
この記事を書いた人 高田裕司(たかだゆうじ) 中小企業診断士、森林セラピスト、キャリアコンサルタント、森林インストラクター 親子、小学生から高齢者までの様々な方のご案内を担当。NEALインストラクターでもある。
植物の生態やネイチャーゲームを取り入れた臨機応変な対応には定評があります。
経営コンサルタントとして、農業者支援を数多く実施。50坪ほどの家庭菜園での野菜づくりとランニングが趣味。

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