今回は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を用いた早春(2月〜3月)の森林の楽しみ方を紹介します。
早春は、表に出てくる大きな変化を見るだけではなく、細部に着目することをお勧めします。そうすると様々なことが見えてくるのです。五感を研ぎ澄ますことで、楽しみが広がります。
逆に急いで通り過ぎたり、ぼーっとしていたりしていると何も見えてこなかったり、感じることができなくなったりすることがあります。
細部に目を向ける理由とどんなことに注目するといいか、その主なものを紹介していきます。
細部に目を向ける理由はどんなことなのでしょうか
落葉樹が春に向けて準備している状況が観察できます
落葉樹は、冬は休眠状態です。
春になると再び活動を開始するのですが、早春はその準備段階で、いわば水面下での活動をしている状況です。冬芽の細部を観察することで、その準備状況が見えてきます。その後花が咲いたり葉が出てきたりしていきます。
見過ごしてしまいやすい目立たない変化がある
早春に咲く花の多くは、最初は小さくて、色もはっきりせず、目立たないものです。目が慣れてくると、多くの花が次第に目に入ってきます。また、オオイヌノフグリなどの小さな花は、見過ごすことが多く、気づかないことが多くあります。
どこに注目していくといいのか
冬芽(ふゆめ・とうが)に注目してみましょう
落葉樹は晩秋に葉を落とし、冬は休眠状態になります。春再び活動を開始するために準備しているのが冬芽です。枝先にある小さな卵のようなものがそれです。
冬芽を分解してみるとわかりますが、中には小さく折りたたまれた葉や花の蕾が入っています。その冬芽の中で、生長して花になる芽を花芽(かが・はなめ)、葉になる芽を葉芽(ようが)といいます、通常花芽は葉芽より丸みがあって大きく、植物によって花芽のできる場所や時期が決まっています。
冬芽には様々なものがあります。厳しい冬を乗り切るためにそれぞれが様々な工夫をしているのです。
コブシやモクレンは毛皮をまとい、トチノキは虫を寄せ付けないようにするためにネバネバの樹脂でコーティングし、コナラは芽鱗(かりん)を重ね着するなどです。
こんな冬芽を眺めてみたり、触ってみたりで違いを楽しんでみましょう。
また、花になった姿や葉が芽吹く姿を想像しながら眺めるのもお勧めです。
様々な花に注目しましょう
地面にも小さな花々が咲き始め、木々もロウバイ、ウメ、ツバキ類そしてサクラと次第に多くの花が咲き乱れるようになるのがこの時期です。
最初は一部の小さな花が咲き、それから樹木の全体に広がっていくのが多くの花の咲き方になります。不思議なもので、小さな花は、「きっと咲いているはず」という思いを込めて探すと見つかるものです。逆に言えば、そうでないと見過ごしてしまう場合があるのです。一つの花を見つけると他の花もどんどん見えてきます。
いろんな違いを楽しみましょう
樹皮の感触の違いや木の幹の温度の違いも他の時期同様楽しむことができます。
また、常緑樹は落葉しないので、この時期も青々とした葉がついています。ですので、他の時期と変わらず、葉を触って、アオキなどのようにすべすべのものもありますし、ザラザラのものもあります。また、葉の匂いも楽しむことができ、その違いを楽しんでみましょう。
なお、落葉樹に寄生するヤドリギという生物の全体像を見られるのはこの時期だけです。
五感を用いた森林の楽しみ方を様々なところで実施していますが、参加者の感想で必ずあるのは、「こんなにゆっくりと森林の中を歩くことはない。五感を使ってみると様々なことに気がつくし、リラックスしている自分に気がつく」です。
以前に春の楽しみ方(
「五感を用いた森林の楽しみ方(春編)」をお伝えしました。そちらも参考に
http://hakojo-lab.jp/media/2018/03/12/154参考図書「冬芽ハンドブック」文一総合出版 広沢 剛/解説 林 将之/写真
この記事を書いた人
高田裕司(たかだゆうじ)
中小企業診断士、森林セラピスト、キャリアコンサルタント、森林インストラクター
親子、小学生から高齢者までの様々な方のご案内を担当。NEALインストラクターでもある。
植物の生態やネイチャーゲームを取り入れた臨機応変な対応には定評があります。
経営コンサルタントとして、農業者支援を数多く実施。50坪ほどの家庭菜園での野菜づくりとランニングが趣味。