眩しい日差しに深緑の息吹きが熱くみなぎる夏。
夏を健やかに過ごすために、心と身体を慈しむ時間についてお話したいと思います。
森林の旅の始まり
梅雨が明け、早朝の森に訪れてみると、湿った土や枯葉、瑞々しい滴を踊らせて潤う苔、地球の温かく籠った体温とその息遣いが、辺りの霧状の細かなミストを少しずつ伝って全身を優しく包み込んでくれます。
1年の中でもフィトンチッドが多いと言われる6月〜8月頃、むせ返るような少し圧倒される程の溢れる香りと様々な表情で、迎えてくれる森林に、心が素直にほどけていきます。
私達の心をゆるめ、ほぐし、包み込んでしまう森林は、決して遠い存在ではなく、いつも私達の生活に寄り添い、移り行く四季の変化や訪れを教えてくれる、かけがえのない日本の美しい自然なのです。
森林の香り、それは、生命の香り
森に訪れると、ホッと安心するような匂いを感じます。
これは、以前コラムでもお伝えしたように、植物、主に樹木達が出している成分の、フィトンチッドが原因の一つです。
このフィトンチッドには、抗菌、殺菌、防腐効果等があり、私達人間はこの効果を自然の恵みとして様々な形で生活に取り入れて活用しています。
フィトン=植物、チッド=殺す。植物達は、私達人間や動物達のように自分で動くことが出来ません。
風に運ばれた種子が芽を出した場所で一生を過ごすのです。
そのため、外敵から自分の身を守るために、抗菌や殺菌効果のあるフィトンチッドを出していると言われています。
直訳すると少しおどろおどろしい響きですが、樹木達は、その姿、香りで、何千年も生き続ける生命の逞しさ、生きる力を、静かに伝えてくれているのかも知れません。
そして、どこか懐かしいような、そして安心する、森林の香り。
それは、私達人間に、科学的に実証されたリラックス効果や、生活や空間の快適性等を与えてくれるだけではなく、遥か遠い昔から人間が森に住み力強く生きてきた記憶の足跡を、鮮明に描き教えてくれます。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚。
現代を生きる私達は、自分の五感をどれほど意識し、知っているのでしょうか。
針葉樹、広葉樹、草地、湖沼、里山、豊かな植生環境に様々な動植物が混在しながら調和する日本の自然に触れ、森林を旅することは、人間の歴史を振り返るとともに、鈍った五感を呼び覚ます。
つまり、自分の心と身体を知り慈しみ、明日への生きる力を蓄える、自然と人が繫がる場所なのです。
より良い睡眠へ誘って 夏を健やかに過ごすために
蒸し暑く寝苦しい夜、いつもより寝付きが悪い、目が覚めてしまう。
人は、心と身体、精神の様々なリズムが、自然や社会のリズムの周期性と同調し恒常性を保つことで、健康に過ごせます。
春からの疲れ、少しずつ溜め込んでいませんか?
テレビやゲーム、つい夜更かししていませんか?
不規則な生活はやがて小さな不調に繫がり現れてきます。
人間が本来持っている自然のリズムを取り戻し、未病を防ぎ、夏を健やかに迎えられるよう、生体リズムをもう一度見直してみましょう。
森林を旅して 植物の香りと自然のリズム
森林を旅した日は、就寝前に、少しぬるめの湯(38℃〜40℃程)にゆっくりと浸かりましょう。
副交感神経が活性化し、心身のリラックスや疲労回復に繫がります。
また入浴の際は、植物達の香りをハーバルバスとして取り入れることで、その香りが浴室全体に広がり、アロマテラピー(芳香療法)効果も期待出来ますのでおすすめします。
旅した森林で出会った、例えば、檜や杉の枝葉、クロモジやドクダミ、ヨモギ等のハーブをサシェとして湯船に浮かべます。
呼吸をする度、森林を旅しているような森林浴Forest Bathingの時間が過ごせます。
さらに携帯やテレビ、デジタル機器は少しオフにしてデジタルデトックスの時間を創ることで、心も身体もより自然に近いフラットな状態を導き、入浴後の質の良い睡眠へと繫がります。
自分の心と身体を見つめ、耳を澄ますこと。
森林を旅するセルフケアで食・運動・癒しの調和、自然のリズムに添ったライフスタイルをもう一度心掛け、心と身体のサインを見逃さないよう、楽しく未病の改善をしていきましょう。
この記事を書いた人
工藤 知恵
森林セラピスト、AEAJアロマセラピスト、インストラクター、ハーバルセラピスト、アーユルヴェーダセラピスト
日本産のアロマ、ハーブの普及、地域活性に取り組む。
こころとからだ、箱根の豊かな森林で、ゆっくりと深呼吸。
森林に触れると、現代を生きる女性に役立つ、嬉しいが一杯です。
森林セラピーを、身近に楽しく触れていただけるよう、お伝えしていきたいと思います。
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