筆者が心理カウンセラーとして話を聞いている中で、やはり多いかなと思われるのは、ストレスを内にためこむ人。 本記事では、ストレスを外に出す人と内にためる人を、まず見ていきます。そして、ストレスや脳疲労を考えるとき、これまでは見過ごされがちであった「隠れ疲労」についても取り上げ、その予防法もひとつご紹介します。
外に出す人と内にためこむ人の特徴
ストレス処理の仕方は、外に出すか内にためこむかで、大きく2つに分けることができます。
ストレスを外に出すというのは、不満や怒りなどを口に出したり、行動で表したりということ。直接相手に言うときもあれば、誰か別の人にグチや批判として言うこともあるでしょう。また、他の人への八つ当たりのようなものなど、ほかにもさまざまな表出の仕方があります。
ストレスを外に出す人は、ときに周囲から迷惑がられることもあるかもしれません。それでも、ストレスを外に出すことによって、自分自身の内側にストレスをうっ積させるということは少なくなるでしょう。
一方でストレスを内にためこむ人は、性格的に内気でなかなか人に言えない人であったり、相手に気をつかって言わないようにしている人であったり、ネガティブなことを口に出したくないという人であったり、あるいは自分自身を責めたりする人であったりと、こちらもさまざまです。
ストレスを内にためこむため、周りに直接迷惑をかけるようなことはあまりありません。ただ、内にためこむほどに、その人自身はしんどくなってしまいがちです。ひどくなると心身の不調をまねいてしまうこともあります。
「隠れ疲労」は知らず知らずに負荷が増える
大きく二つに分けてみましたが、実際には時と場合によってストレス処理の仕方が違う人は多いですし、どちらとも言えないような人たちもいます。ストレスなんて感じてない、ストレスとは無縁のように見える人たちもいます。
そういった人も含めて、ストレスや脳疲労に関して、全ての人が注意しておいた方がよいと思われるのが「隠れ疲労」です。
隠れ疲労とは、文字通り隠された疲労のことですが、実際には疲れているにもかかわらず、見過ごされている疲労のこと。知らず知らずのうちに疲労が蓄積していってしまうため、注意が必要です。
やりがいや達成感は、いいことばかりでもない
では、少し別の角度からも見ていってみましょう。
やりがいや達成感はとても大事です。「やりがい」があることで、人は意欲をもって頑張っていくことができます。非常に困難なことであっても、それを成し遂げた後に「達成感」を感じられると、それまでの苦労が報われ、嬉しくなって疲れも吹き飛んでしまうようでしょう。やりがいや達成感といった快の感情には、ストレスや脳疲労を吹き飛ばしてしまうくらいのパワーがあるのです。
これはこれでよいことではありますが、実はこれが「隠れ疲労」を生み出すプロセスにもなります。多少の疲労は、やりがいや達成感によって、感じなくすることができるからです。疲労の研究者はこれを、疲労を隠すという意味で「疲労感のマスキング」とも言っています。
ほかにも疲労感をマスキングするものはいくつもあります。現代的なところでいうと、SNSでの「いいね!」もそのひとつです。
「いいね!」はネット上での承認欲求を満たしてくれるものと考えることもできます。「いいね!」がつくと気分がよいため、投稿する労力であったり、スマホやPC操作による脳疲労などが感じにくくなります。このため、ついつい度が過ぎてしまい、「隠れ疲労」ともなりえるのです。気をつけましょう。
睡眠と、癒しや安らぎの習慣化を
「隠れ疲労」は最悪の場合、過労死を招いてしまう可能性さえあります。
それでは、こうした「隠れ疲労」に気をつけるためにはどうしたらよいのでしょうか?
「隠れ疲労」は気づかないうちに、潜むように蓄積していきます。これを防ぐためには睡眠が最重要ですが、さらにはある程度定期的に疲れを減らしたり、リセットできるような活動を習慣化することが効果的であると考えられます。
そういったことを考えると、森林浴による癒しや安らぎは、比較的お手頃であると思います。実際、森林浴の研究によると、2泊3日の森林浴体験の効果は約1ヶ月間持続するといったことなど、さまざまな癒し効果もあることがわかってきています。
たとえば、日々の生活の中に植物を意識的にとりいれたり、ときどき近くの緑ある公園でお散歩やぼんやりするなどして過ごしたり、さらには少し遠出をして森に行って森林浴を楽しむというのもよいでしょう。
この記事を書いた人
新行内勝善(しんぎょううち かつよし)
心理カウンセラー、森林セラピスト、精神保健福祉士。
東京メンタルヘルス社にて、メンタルヘルス相談や、心の病からの職場復帰をサポート。
職場復帰プログラムでは森林セラピーを導入。
また、スクールソーシャルワーカーとして小中学校の子どもたちと家庭をサポート。