最近増えてきている「ネット依存」とは?
依存症といえば、アルコール依存を思い浮かべる方も多いことでしょう。依存症で、ここ最近増えてきているのは、ネット依存。
依存症とまではいかないけれども、というところで、一般には、スマホ中毒、SNS中毒、ゲーム中毒などと呼ばれることもあります。
ネット依存については、問題が取り沙汰されることが先行しており、まだ診断基準の確立などはこれからといった状況です。
ネット依存の特徴としては、
① インターネットに過度に【没入】し、ネット使用時間の【コントロール】が出来なくなってしまう。
② ネットが使用できないと【パニック】のように心を取り乱す。また、ネットにつながる方法をなんとしてでも手に入れようとする【探索行動】がある。
③ ネットの過度の使用により、人間関係や心身の健康に【弊害】が出ている。
④ ネットをやめようとしても、自分の力だけではやめることができない。
ネット依存の疑いは271万人にも
依存症治療で有名な久里浜医療センターの調査では、20才以上でネット依存が疑われるのは、男性約153万人、女性約118万人の計約271万人と推計されています。
また、総務省の2014年の調査によると、「ネット依存傾向が高かった人」は、スマホ保有者で11.8%、スマホ未保有者では4.1%でした。
スマホ保有者のネット依存傾向が、未保有者の約3倍にまでなっており、スマホを持つことによってネット依存の問題が広まっていく傾向がわかります。
(参考)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc143110.html
女性はSNSに、男性はゲームにはまりやすい
ネット依存には、【SNSコミュニケーション依存】と【ゲーム依存】とがあります。
SNSとはソーシャル・ネットワーキング・サービスのことですが、代表的なものにTwitter、Facebook、LINE、Instagramなどがあります。
朝起きたら真っ先にSNSをチェックするとか、ほかの人からSNSばかりやっていると怒られたりしたことがあるとか、SNSに投稿するために日常生活を彩ろうとするとか、そういった行動が過度に見られたら、依存への危険信号です。
ゲーム依存は、男性に多く、また子どもにも多いのが特徴です。ゲームをやり始めると時間のコントロールができなくなり、生活リズムが乱れたり、昼夜逆転したりすることも少なくなく、またゲームの邪魔をされると怒ったり取り乱したりします。
そして、ゲームを取り上げられると、なんとかしてゲームをやろうと親や周囲の目をくぐりぬけてまでしてやろうとします。
子どもでひどい場合には、学校にも行かず、日常の全てがゲームとなってしまうことさえあります。
ネット依存脱出のための3か条
ネット依存から脱出するために必要なことは3つあります。
①ネット依存の背景にある心理社会的問題の改善
②ネット依存の習慣的な行動を変える
③ネットの外の世界に楽しみを見つける
このうち、もっとも難しいのが①の背景にある問題です。「心のスキマ(虚しさ、淋しさ等)」「満たされない欲求」「トラウマや傷つき体験」「心の病や発達障害」などさまざまです。
ここは、専門的治療やカウンセリングが必要なところです。
改善のためには困難が伴いますが、背景にある問題が改善することで、依存が再発したり、形を変えて他の依存が起こることも少なくなります。
②のネット依存で染みついた習慣的な行動を変えるためには、ひと工夫必要です。心がけや注意だけではなく、物理的にネットにアクセスしにくくする工夫が必要です。
【物理的にネットにアクセスしにくくする工夫例<スマホの場合>】
・スマホの契約内容を通信量(ギガ)の少ないものに変更
・家でスマホからWIFI接続できないように、スマホか通信機器(ルーター等)の設定変更
・SNSやゲームアプリからの「通知」が来ないように設定変更
・アプリを、すぐには利用しにくいフォルダの中など奥の階層に格納。もしくは、アプリをスマホから削除・夜寝るときは、スマホを手の届かないところに置くか、スマホの電源を切る
・夜10時〜朝6時まではスマホを使用しない、などと使用時間を決める
・スマホの私的利用は、「ひとりのときで、他に何もすることがないとき」のみにする
・「食事中」や「誰かと話している時」にはスマホを操作しない
特におすすすめは森林セラピー!
③のネットの外の世界に楽しみを見つけるについては、森林セラピーが特におすすめです。理由は五感を使うことと、体内時計の調整、そして癒し効果です。
ネットは二次元の世界で、においもなければ、モノや人に触れることもなく、暑さ寒さも、光も風も感じることはありません。このためネット依存が進むと、五感が錆びついてきてしまいます。生き物にとって五感、つまりセンサーをうまく働かせることは、健康に安全に生きながらえるための必須条件です。
錆びついてしまった五感をメンテナンスするには、自然の中で、五感をいきいきと働かせ、楽しみや癒しを得ることが一番です。
さらにもうひと頑張りできるようであれば、天気のいい朝に森に出かけ、朝陽を浴びることで、体内時計がリセットされ、ネット依存で乱れた生活リズムを気持ちよく立て直していくことができるでしょう。
この記事を書いた人
新行内勝善(しんぎょううち かつよし)
心理カウンセラー、森林セラピスト、精神保健福祉士。
東京メンタルヘルス社にて、メンタルヘルス相談や、心の病からの職場復帰をサポート。
職場復帰プログラムでは森林セラピーを導入。
また、スクールソーシャルワーカーとして小中学校の子どもたちと家庭をサポート。