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森が教えてくれること②

~森と生きる日本(森林科学)~
  • 日本は森林大国
  • 森林には種類がある
  • 森林の役割
  • 森林の活用と森林を守る取り組み
  • 森林と人との共生ー国民の森林「国有林」

日本は森林大国

地球上の陸地面積の3割である3950万㎢が森林です。そのうち日本の森林面積はおよそ25万㎢と面積は多くありませんが、日本の国土面積に占める森林の割合(=森林率)は68.2%と高く、主要先進国の中ではフィンランドの73.9%に次いで2番目に森林率が高い森林大国です。



森林には種類がある

ひとくちに森林といっても実は様々な種類があります。どのような分類があり、どんな種類があるのでしょうか?

人為的行為の程度による分類

・原生林(天然林)…まったく人の手が入っていない森林
・二次林(天然林)…伐採など人の手が入っても自然の力で生まれ変わった森林
・人工林…人が植林して作った森林

日本には純粋な原生林はほとんどなく、長らく人の手が入っていないというくらいの定義ですと、奈良県春日大社の春日山原生林、北海道知床半島、白神山地、沖縄北部のヤンバルの森などがあります。

二次林は「里山」の多くがこの分類に入ります。二次林は人為的に伐採した後、木々の天然更新と呼ばれる自然に発芽して増えていく活動で再び森になったものです。里山は農山村において薪や炭にするため、生活に必要な分だけ繰り返し伐採してきました。
しかし、むやみやたらに伐採するのではなく、天然更新によって再び森になるように配慮してきました。これは持続可能な森林経営の一つとして、農山村の生活をささえてきました。

人工林は日本の森林全体の4割を占め、多くの人工林が昭和30年代に始まった、木材の安定供給を目的とした活動で植樹された「スギ・ヒノキ・アカマツ」です。



そのほかの分類には、林相(りんそう)=樹種と構成による分類(針葉樹林・混交林など)や、場所による分類(温帯林・高山帯林など)、所有形態(国有林・私有林など)といった種別があります。多くの分類を必要とするのは、日本が多様な森林に恵まれているからです。

森林の役割

日本の多様な森林は、様々な役割を担い、私たちの生活を支えています。どのような役割があるのでしょうか?

(1)水源涵養機能(すいげんかんようきのう)

水を貯える機能は「緑のダム」といわれ、河川の水流量を平均化しています。雨をろ過し水質を保全する機能もあります。また、窒素やリンは植物に吸収され、岩石などのカルシウムイオンにより、水を中性に近づけていく役割があります。



(2)温暖化緩和機能

植物の光合成によって、温暖化の原因になる温室効果ガスのひとつである二酸化炭素を、森の植物が吸収し炭素を貯え、酸素を排出します。


(3)快適環境形成機能

美味しい空気と、美味しい水のほかに、夏には涼しい木陰を作るほか、「フィトンチッド」と呼ばれる樹木から発する揮発性物質によって、人にリフレッシュ効果をもたらしてくれます。また樹木は不快な音を減退させるため森に入ると騒音から解放されます。さらに、森には人が心地よいと感じる小鳥の声や小川のせせらぎなどの音があふれています。



(4)そのほかの森林の機能

日本学術会議が2001年に農林水産省の答申した「地球環境・人間生活にかかわる農業・森林の多面的な機能の評価」では、前述した①~③以外に次のような機能があると指摘しています。

生物多様性保全/土砂災害防止・土壌保全/保健・レクリエーション機能
自然景観や教育、伝統、文化などの文化機能/木材などの物質生産機能

森林の活用と森林を守る取り組み

様々な機能をもつ森林を私たちは様々に活用してきました。しかし、活用する一方では森林は荒れてしまいます。たとえば2000年から2005年の5年間に、世界の森林面積は7.3万㎢ずつ減ってしまいました。これは日本国土の2割相当の面積です。森林を活用しつつ森林を守るためにはどのような取り組みがあるのでしょうか?いくつかご紹介していきましょう。

(1)森林保全の国際的協調

森林を守る国際的な取り組みとして1992年(平成4年)の国連環境開発会議=地球サミットで採択された「森林原則声明」が森林に関する初めての世界的合意でした。それ以降、2000年には国連森林フォーラムが設立され、「持続可能な森林経営」を推進する方策について話し合われました。

そのほか、1993年からスタートしていた「モントリオール・プロセス」において、具体的な基準・指標が作られ、カナダ・アメリカ・ロシア・日本などが中心となって温帯林を対象に7つの基準と5つの指標が作られました。また日本は欧州諸国とともに「違法に伐採された木材は使用しない」という基本原則に基づいた国際協力に、積極的に取り組んでいます。



(2)里地里山(さとちさとやま)の持続可能な森林経営

森国土の7割を森林が占める日本は、まさに森林から多くの恩恵を受けているといえます。その代表的なものに「里山」と呼ばれる二次林があります。それらと混在する農地やため池、草原など含めて「里地里山」と呼ばれます。

里山は農村集落の共有林か入会地(いりあいち)であることが多く、それは地域の共同体が共有する土地であり財産です。雑木を伐採し薪や木炭として利用したり、シイタケ栽培の土台になる木として利用したり、落ち葉はかき集められて堆肥として利用したりと様々に活用されてきました。

このように適度に利用しながらも、むやみやたらに伐採せず、雑木を伐採しても木々が天然更新を繰り返し、10年~20年後には薪や木炭の材料となる木に成長するようにしていました。電気やガス・石油が普及するまでは、里山は再生可能なエネルギーの供給地であり、持続可能な森林経営を行っていたのです。



(3)日本の林業

第二次世界大戦終戦直後から昭和30年代までは、復興景気で木材価格が高騰していました。そこで政府は「拡大造林政策」を掲げ、雑木林などを伐採した跡地や原野に、建築用材向けのスギやヒノキ、カラマツなど成長の早い針葉樹を植えることを推奨しました。

時を同じくして、薪や木炭が燃料だった時代から電気やガス、石油に移り、里地里山の役割が不要になってきたこともあって、拡大造林政策は加速していきました。大量に植樹されたスギやヒノキは40年もすれば材木になる予定でした。

ところが、昭和39年に木材輸入の自由化が始まり、国産に比べて安く、一定品質の材木をまとまって入手できる外国産材が人気となっていきました。その後、国産材は昭和55年ごろをピークに値下がりを続け、とうとう国内の林業は採算をとることが難しくなっていったのです。そのため材木用に植林された大量の人工林は放置され、荒れてしまいました。

政府は平成21年に国内林業の活性化と山村の地域再生を目指して「森林・林業再生プラン」を発表しました。アジア圏の成長を取り込んだり新しい需要を創出したりといった潜在力を見込んで、木材の安定供給力を強化すること、林業のハード面ソフト面ともに全面的に見直すことなどを進め、平成32年までに木材自給率を50%に引き上げることを目標としました。




(4)環境保全(CO2削減)と森林

森林は二酸化炭素(CO2)を吸収し、水と太陽エネルギーを使って光合成をおこなう活動で有機物を生産し酸素を排出します。それは地球温暖化の防止に貢献しています。 具体的な指標として、平成9年「京都議定書」において、日本は基準年(平成2年)と比べて6%削減することを定めています。 そのうち2.2%は産業や省エネ、発展途上国への支援によって達成することにしていますが、のこりの3.8%は、「森林によるCO2吸収」で達成することにしています。つまり日本においてはCO2削減の主力は森林経営であるといえます。

京都議定書で認められているCO2削減の森林経営は、次の3つ

[1] 過去50年間森林でなかった土地に植林する「新規植林」
[2] 1990年の時点で森林でなかった土地に植林する「再植林」
[3] 間伐を怠らないなど「持続可能な森林経営」がなされている森林

しかし、日本では[1][2] のような土地はほとんどないため、[3] 「持続可能な森林経営」を広めることが必要なのです。

森林と人との共生―国民の森林「国有林」

森林の所有者で分類したとき、国の機関が所有する「国有林」が約3割、個人や企業など民間で所有する「民有林(私有林)」が約6割、地方公共団体が所有する「公有林」が1割です。この中でも国有林は比較的自然林が多く、国有林全体に占める人工林の割合は31%と少ないのが特徴です。

反対に民有林と公有林は人工林の割合が46%と国有林に比べて多くなっています。

国有林は世界自然遺産登録地域のほぼ全域が含まれ、また野生動物の生息域として重要な森林も多くあります。野生動物を含む森林生態系を守るため「保護林」や保護林をつなぐ「緑の回廊」が制定されています。

保護林は7つの区分がありますがそのうちのひとつ「森林生態系保護地域」は49万5千ヘクタールほどもあり、面積では保護林の3分の2を占めています。そして野生動物たちの移動経路に合わせて、その中間地域を緑地などでつなぐ緑の回廊を設定し、より広範囲な森林生態系の保全をはかろうとしています。

身近な国有林では「レクリエーションの森」があります。それは、景観の優れた自然や、野外活動や自然観察に適した森林など、国民が森林と触れ合えるような場所として設定しています。

そして、国有林は3つの類型に分けて管理されています。国土の安心安全のための「水土保全林」、自然環境の保全と森林とのふれあいのための「森林と人との共生林」、資源や森林機能を継続的に守りながら木材生産を重視した「資源の循環利用林」です。

これらの管理も、前述した保護林や緑の回廊も、レクリエーションの森も、私たちが身近に森林を感じながら、森林の機能を利用し活用し、いつまでも安心して暮らすことができるようにするものです。すべてが森林と人との共生のためともいえるでしょう。


まとめ

国土の7割が森林である森林大国日本。私たちはかつて里地里山に代表するような身近な森林と関わりながら暮らしてきました。そして森林を科学的に見ていくと、森林には暮らしに欠かせない多くの機能があり、私たちはその恩恵を受けています。

森林の恩恵を受けながら森林を守るため、森林と人が共生する道が模索され、行われています。都市部に住んでいる方には実感の薄い話かもしれませんが、1本の草木に心を寄せてみたり、身近な森林へ出かけてみたりなど自然と触れあうたびに、少しずつ「森と生きる日本」の姿に思いをはせていただけたらと思います。

*参考文献
      『森林セラピスト(森林健康指導士)養成・検定テキスト』
  『森林セラピー検定副読本(フィールド編)第Ⅱ版』
  林野庁Webサイト『国民の森「国有林」』

*執筆:麻羽たんぽぽ
      (一社)はこねのもりコンソーシアムジャパン理事
  (株)森と紙ひこうき代表
  ・未病観光コンシェルジュ・森林セラピスト
  ・ハーバルセラピスト
  ・和ハーブインストラクター・産業カウンセラー

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