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森が教えてくれること⑤

~森から生まれた緑の薬箱(森林薬学)前編~
  • 日本の民間薬
  • 日本の植物セラピー

森が与えてくれる恵みには、私たち人間の「健康」に欠かせない成分がたくさんあります。そのような成分を、薬として、予防医学的な方法として、リラクゼーションとして、古来より日本人はどのように活用してきたのでしょうか?

 

日本の民間薬

私たちの身の回りにある薬の多くが植物から作られています。現在では薬用植物から分離したものや、科学的に合成したもの、それらの化学構造を改変して作用を強めたり副作用を減らしたりしたものも数多くあります。しかし、古くは経験から得た知識をもとに、植物そのものを薬として活用してきました。そのような薬を「民間薬」と言います。

民間薬とは、前述したように経験から得た知識をもとに活用してきた薬用植物のことです。単一の薬用植物をそのまま使うか、乾燥させるなど加工したもの「生薬(しょうやく)」を使用します。漢方では複数の生薬を使用して別の薬効を生み出し体系化しています。

多くの民間薬がありますが、その中でもとくに、日本では「日本三大民間薬」と呼ばれる「センブリ、ゲンノショウコ、ドクダミ」が身近に多く生育し、古くから多くの人が利用してきました。

<センブリ>

「千振」(センブリ)は「千回振りだしてもまだ苦い」ところから名がつきました。開花期の全草が「当薬(とうやく)」で、日本薬局方には「苦味(くみ)健胃薬」原料として収載されています。北海道西南部~九州の日当たりのよい湿った草地に自生します。リンドウ科二年草、日本固有の植物です。

<ゲンノショウコ>

「現の証拠」(ゲンノショウコ)は大変優れた整腸薬で別名「イシャイラズ(医者いらず)」ともいわれてきました。『本草綱目啓蒙』という古い薬学書には「痢疾(りしつ)を療するに効あり、ゆえに現の証拠という」としるされており、名前の由来が薬効にあります。フクロソウ科の多年草です。

<ドクダミ>

「蕺」(ドクダミ)は、様々な薬効があることから「ジュウヤク(十薬)」とも呼ばれています。生薬としての「十薬」は花期の地上部(茎、葉、花穂)を日陰干ししたもので、日本薬局方に収載されています。整腸薬のほか、民間では生薬を炙って腫れものや外傷にもちいられました。また、古くから毒下しにもちいられたことから「毒矯(は)み」が語源といわれています。ドクダミ科の多年草です。

このような草本の薬草だけでなく木本類での薬木には、キハダ、ナンテン、メグスリノキ、ヤブツバキ、アカメガシワなどがあります。

日本の植物セラピー

健やかな心身のために、日本人は様々な方法で植物の薬効を暮らしに取り入れてきました。植物を乾燥させたり、煎じたり、湿布や塗布したりといった薬としての使い方のほか、入浴、化粧、芳香にも使われてきました。

<入浴・石鹸・化粧水>

写真左:ショウブ、写真右:ユズ

民間療法の薬草湯としては、ヨモギ(蓬)、ドクダミ(蕺)、クロモジ(黒文字)、ジャコウソウ(麝香草)などが使われていました。端午の節句で用いられるショウブ(菖蒲)湯、冬至の湯治(とうじ)にはユズ(柚子)湯は、現代でも身近な植物の活用方法です。ショウブには鎮静、鎮痛、鎮痙、鎮咳、去痰、血圧降下、食欲促進、抗炎症などの効能があり、ユズには血行促進や芳香によるリラックス効果があります。民間ではショウブ湯はおよそ鎌倉時代ごろから、ユズ湯は江戸時代ごろから盛んに行われるようになりました。

しかし、現代人と違って入浴に禊(みそぎ:身を清めて厄払いする)の意味合いが強かった時代には、いずれも強い香りが邪気を払うと考えられたり、語呂が良い(ショウブ:勝負、ユズ:身体息災であれば融通が利く)と考えられたりして行われてきたとも言われています。また古くは、もともと中国原産である「ショウブ」ではなく、「セキショウ(石菖)」が入浴剤として使われていました。



写真はムクロジ(無患子)

そのほか洗髪では、平安時代には「ゆする(泔)」と呼ばれる米のとぎ汁を櫛につけて髪を梳かしていました。江戸時代には米糠を布袋にいれて身体をこすっていました。植物原料の石鹸材としては、サイカチ(槐)、シロアズキ(白小豆)、エゴノキ(野茉莉)、ムクロジ(無患子)などがあります。これらには「サポニン」という成分が多く含まれているため、水につけて揉むと泡が出てきます。

日本の植物を活用した化粧品の代表的なものでは、現代でも使われている「ヘチマ水」があります。ヘチマ水は実が熟したころに地面から30~50㎝あたりでツルを切り、根側の茎に容器を刺し、実に送られるはずの栄養を含む水を容器に溜めます。江戸時代にヒットしたヘチマ化粧水には、ベストセラー作家の式亭三馬が本職の薬屋で売り出した「江戸の水」という商品がありました。

<芳香・アロマ>

写真は市販の芳香蒸留器

植物の香りを加工して活用する方法はいくつかあります。水、湯、油、酢、アルコールなどで抽出できますが、昔はお茶にして飲むかお湯をかけて香りの湯気を浴びる芳香浴、そして薫香でした。「香」は、飛鳥時代に仏教伝来とともに中国からお香が伝わったのをきっかけに始まります。王朝から貴族の間へと広まっていきました。仏事だけではなく、平安時代には匂い消しのほか、香を焚きしめた部屋や衣服、手紙など、香りそのものを楽しむ文化になっていきました。それは次第に日本人の四季観や感性、日本の気候風土に合った文化へと変化し、やがて室町時代になると香りを極める「香道」が成立しました。

江戸時代には香りの文化は一般にも広がり、アラビア語の「アランビック」が語源の「蘭引(らんびき)」は簡易アロマ蒸留器として、酒類製造やアロマ成分を抽出した化粧水製造などに使用されました。明治時代には、クロモジ(黒文字)からとれる精油(香り成分の揮発性油)を化粧品や石鹸に活用したり、ヨーロッパへ輸出したりしていました。これらの他にも日本の各地で、和薄荷やタムシバ、ニワトコなど、様々な植物の芳香を利用してきました。

草本類だけでなく木本類では、トドマツ、スギ、ヒノキ、イトスギ、クロモジ、ホウショウなど芳香を出す樹木もあります。精油をとることもできます。

ここまで、古来より日本人が植物を薬として、予防医学的方法として、リラクゼーションとして心身の健康にどのように活用してきたかをご紹介しました。次回~森から生まれた緑の薬箱(森林薬学)後編~では、森や植物から得られる成分の恩恵を加工せずに、そのままの形で心身の健康に活かす方法をご紹介します。

*参考文献
    『森林セラピスト(森林健康指導士)養成・検定テキスト』
    『森林セラピー検定副読本(ヘルスケア編)第Ⅱ版』
    『和ハーブ にほんのわすれもの』
    『和ハーブ にほんのたからもの』


*執筆:麻羽たんぽぽ
    (一社)はこねのもりコンソーシアムジャパン理事
    (株)森と紙ひこうき代表
    未病観光コンシェルジュ・森林セラピスト
    JAMHA認定ハーバルセラピスト
    和ハーブインストラクター・産業カウンセラー

 

   

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