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【和ハーブコラム】植物に想いを宿すということ

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【和ハーブコラム】植物に想いを宿すということ

鳥取・三徳山にて

今年の秋のはしり、大山隠岐国立公園の三徳山(みとくさん)を歩く機会に恵まれました。

古来、修験の行場として知られてきた山の上には、国宝「投入堂」があります。

人の手によって建立されたはずの建造物が、よく見ると断崖絶壁のわずかなくぼみに見事なバランスで収まっています。

修験道の開祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)が三徳山に立ち寄ったとき、ふもとで建てたものを念力でぎゅっと縮めて、岩窟に思いっきり投げ入れたお堂と言い伝えられているのだとか。

なるほどそんなSF的ストーリーが腑に落ちるほど、投入堂は圧倒的な凄みを放っていました。

そこへ至る参拝道もまた険しいものでした。ほぼ垂直に切り立った岩をよじ登る鎖場のほか、(樹木に)申し訳ないと思いつつも根の網目を階段がわりに足を掛け、幹や枝を手すりがわりに進む…そんな“クライミング状態”が続くので、一瞬・一歩に気が抜けません。
参拝の途中にある別のお堂で一息ついに完登!
投入堂のそばに自分の足で立てたときは、爽やかな達成感でいっぱいになりました。

思うにケガもなくここまでこれたのは、登山口の食堂でご主人に教えていただいた「わらじ履き」のおかげでした。

山の行き帰りだけでもかなり摩耗してしまいましたが、わらじはとにかく軽いこと、岩場が湿っていても意外に滑りにくいこと。

足の裏に地面の土や岩の感触が伝わるのもまた魅力です。
戦友のMyわらじ(登山申込口でも買えます)

山の花、再び現れる

原生林に囲まれた三徳山の参拝道では、土のにおいが間近に感じられるくらい身をかがめ、文字通り全身を使って登っていきました。

そのあいだ何度も心が折れそうになったのは言うまでもありません! 果たして無事に登り切れるのか?

不安と冒険心とが入り混じる中、置いた右手のそばに現れたのが「ヤマジノホトトギス(山路の杜鵑草)」でした。

この名はホトトギス(鳥)の胸元にある斑点と花の模様が見た目に似ていることに由来するそうです。
ヤマジノホトトギス

ユリ科の日本固有種今回の道すがらずっと、私はこの花の存在に支えられていました。ただ素敵だったからだけではありません。

話は三徳山を訪れる半月ほど前に遡るのですが、実父が死出に旅立った夏の終わり、部屋のラジオからある曲がぼんやり聞こえてきました。
それは桑田佳祐さんの『ほととぎす(杜鵑草)』という歌でした。

歌詞に耳を澄ますと父からのことばのように直感し、しばらく涙がボロボロと止まりませんでした。

夫にそのことを話すと「ホトトギスの花言葉は“秘めた意志”なんだってね、あまり多くを語らなかった人だけどいつも見てくれていた、まさにお父さんのような植物なんじゃないかな」と添えてくれました。

後から知ったことですが、俳句好きの父が大切にしていた歳時記をめくると、ホトトギスの切なく響く鳴き声から「死出の田長(しでのたおさ)」つまり“冥土の使い”の異名を持つ、というようなことが記されていました。

あの日私がホトトギス(草)と出会えた三徳山にも、父が舞い降りてくれていたならと思います。

驚いたのは帰り道の自分。来た道と違うのではと錯覚するほどに、軽々と心地よく下りきった私がいました。

勇気をもって何かを乗り越えると、ひとまわり強くなって、新しい風景を体感できるのかもしれません。

最後のひと柿に想いをこめて

このコラムを書いていた頃、我が家のお隣さんとの境に1本のカキノキがありました。

果物が熟れるということは次の季節の訪れを伝えるサイン。

やっと熟した果実も日々あっという間に鳥たちがついばんで、数を減らしています。

いずれすべての葉を落とし、幹と枝だけになる頃はもう、冬が始まっていました。

木に残った最後の果実は冬の季語で「木守(きまもり、こもり)」と呼ぶそうです。

なんとなくO.ヘンリーの短編小説『最後の一葉』を思い起こさせもしますが、このことばはそれとはちょっとニュアンスが違う気がします。

「今年もたくさんの実りをありがとう、また来年もよろしく。木守柿さんどうか最後までこの木をお見守りください」。

感謝に満ちた終わりは、続く希望の始まりを予感させます。今年もまた「木守」とともに、あたたかな想いが日本の冬へ注がれますように。
冬空に映える木守柿 (写真提供;PIXTA)

この記事を書いた人

平川 美鶴  (Mitsuru Hirakawa)

和ハーブライフスタイリスト 
植物民俗文化研究/(一社)和ハーブ協会 理事

8月2日“ハーブの日”生まれ。「和ハーブ」と日本人の関わりを、歴史・文学・薬効・自然風土・産業などから調査研究。講師業、商品企画開発、実践ワークショップを通じ、自然の恵みと共にあった先人の尊い知恵を生かし、未来へどう届けるかを考えるメッセンジャー。共著『あなたの日本がもっと素敵になる 8つの和ハーブ物語 ~忘れられた日本の宝物~』(産学社)、『和ハーブ にほんのたからもの』(コスモの本)
一般社団法人 和ハーブ協会(Japan Herb Federation) http://wa-herb.com

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